フォークリフトのバックブザーは、条文で確認できる義務が「警報装置」の備付けと点検であり、バックブザーという装置名で設置を義務づけた条文は今回確認した範囲に見当たらないため、現場で迷いやすい5つの場面と答えを以下の表にまとめました。
| 現場で迷いやすい場面 | 答え |
|---|---|
| 新しく入れるフォークリフトにバックブザーが付いていないと、法令違反になるのか | フォークリフト構造規格が求めるのは「警報装置」の備付けです。バックブザーという装置名を指定した条文は、今回確認した範囲にありません。警報装置の義務の範囲を見る |
| バックブザーが鳴らないまま、今日の作業を始めてもいいのか | 始められません。警報装置は作業開始前の点検項目であり、異常を見つけたら直ちに補修などの措置が必要です。点検の義務を見る |
| ナンバーを付けて公道を走る機体には、トラックと同じ後退警報の義務がかかるのか | かかりません。2023年1月公布の改正で後退時の通報装置が義務になった車両から、大型特殊自動車と小型特殊自動車は除かれています。公道を走る場合の扱いを見る |
| 近所から音がうるさいと言われたら、バックブザーを止めてもいいのか | 止める前に、音量を調整できる機種への交換と、光で知らせる装置の併用を検討します。音量と光の組み合わせ方を見る |
| バックブザーを付けたから、誘導者や立入禁止の表示は省いてもいいのか | 省けません。接触のおそれがある箇所への立入禁止か誘導者の配置は、警報装置とは別の義務です。接触防止措置との関係を見る |
この記事を読むと、自社のフォークリフトについて、法令で備える装置、点検で確かめる項目、運用で補う対策を条文ごとに切り分けられるようになります。条文を確かめずに装備の要否を決めると、購入仕様や点検表を後から作り直す手戻りが生じやすくなります。
まずは、法令がフォークリフトに求めている警報装置の中身から確認しましょう。
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フォークリフトのバックブザーは義務?法令が備付けを求めるのは「警報装置」
フォークリフトのバックブザーという装置名での設置義務は、今回確認した条文には見当たりません。フォークリフト構造規格第6条が義務として求めるのは「警報装置」の備付けで、装置の種類は指定されていません。
フォークリフトの安全に関する主な定めは、労働安全衛生規則とフォークリフト構造規格に置かれています。罰則を含む法令全体の位置づけは、フォークリフトの安全衛生法令の全体像で整理しています。
本項目では、次の2点を確かめます。
- フォークリフト構造規格第6条が定める警報装置の義務
- バックブザーが警報装置に含まれるかの判断
条文の言葉どおりに義務の範囲をつかむと、販売店やレンタル会社に確かめる項目を絞り込めます。
フォークリフト構造規格第6条が定める警報装置の義務
フォークリフトのバックブザーの義務を条文の言葉から確かめると、購入や受け入れの際に何を確認すべきかがはっきりします。次の条文を見比べ、義務の範囲を自分で説明できる状態を目指しましょう。
フォークリフト構造規格第6条は、フォークリフトは警報装置を備えるものでなければならないと定めています。同じ規格の第5条は、最高速度が毎時20キロメートル未満などの条件を満たす機体を方向指示器の義務から除いていますが、第6条にはこうした除外の定めがありません(※1)。
警報装置に関わる条文の中身は、次のとおりです。
| 条文 | 定めている内容 | 現場での読み方 |
|---|---|---|
| フォークリフト構造規格第5条 | 方向指示器を左右に1個ずつ備える。速度20km/h未満などの条件を満たす機体は除く | 小型の機体には方向指示器がないことがある |
| フォークリフト構造規格第6条 | 警報装置を備える。除外の定めはない | すべての機体が警報装置を備える |
| 労働安全衛生規則第151条の25 | 作業開始前に警報装置の機能を点検する | 備えるだけでなく、作業日ごとに作動を確かめる |
第6条は、警報装置の種類や音量、鳴らす場面までは定めていません。中古機やレンタル機を導入する際は、どの装置が警報装置として付いているかを受け入れ時に確かめておくと、初日の作業開始前点検で迷わずに済みます。
バックブザーがフォークリフトの警報装置に含まれるかの判断
フォークリフトのバックブザーが義務の対象となる警報装置に当たるかを整理すると、ホーンとの役割分担を社内で決めやすくなります。厚生労働省が公開している教材の説明を確かめておきましょう。
厚生労働省が公開しているフォークリフト運転技能講習の補助テキストは、警報装置を、発進時・走行時・作業時などに周囲の人に合図をして安全を確保するための装置と説明しています。同じテキストは、周囲に警告するホーンやバックブザー(後退操作に合わせて鳴る警報音の装置)を警報装置の例として挙げています(※2)。
この説明に沿うと、バックブザーは警報装置の一つであり、警報装置そのものではありません。ホーンを備えた機体であれば第6条の文言は満たしていると読めますが、所轄の労働基準監督署の見解は確認していないため、判断に迷う場合は事前に問い合わせると確実です。
藤崎 遊は中学から高校のころ、仕事の中身を知りたくて本屋を何度も回りましたが、知りたい情報はどこにも書かれていませんでした。答えが1つの資料にまとまっていない状態は、バックブザーの義務も同じです。フォークリフト構造規格、労働安全衛生規則、道路運送車両の保安基準を並べて読んで、初めて答えが出ます。
(※1)出典:厚生労働省 法令等データベース「フォークリフト構造規格」
(※2)出典:厚生労働省「技能講習補助教材」フォークリフト運転技能講習 補助テキスト(日本語)
フォークリフトのバックブザーの点検義務|作業開始前と年1回の自主検査
フォークリフトのバックブザーを含む警報装置は、労働安全衛生規則で作業開始前点検と1年以内ごとの定期自主検査の対象と定められた義務の項目です。1月以内ごとの定期自主検査の項目には含まれていません。
点検の義務は、次の2つに分けて解説します。
- 作業開始前点検でフォークリフトの警報装置を確かめる義務
- 年1回の特定自主検査でのフォークリフトの警報装置の扱い
頻度ごとに見る項目を分けておくと、点検表に警報装置の欄が抜けていないかを確かめられます。
作業開始前点検でフォークリフトの警報装置を確かめる義務
フォークリフトのバックブザーの点検義務を毎日の手順に組み込むと、鳴らない状態のまま走り出す事態を防ぎやすくなります。点検の根拠と頻度を押さえ、自社の点検表と見比べられる状態を目指しましょう。
労働安全衛生規則第151条の25は、フォークリフトを用いて作業を行う日の作業開始前に、前照灯、後照灯、方向指示器及び警報装置の機能を点検するよう定めています。点検で異常を認めたときは、労働安全衛生規則第151条の26により直ちに補修その他必要な措置を講じなければなりません(※1)。
点検の種類ごとの警報装置の扱いは、次のとおりです。
| 点検の種類 | 頻度と根拠 | 警報装置の扱い |
|---|---|---|
| 作業開始前点検 | 作業を行う日ごと(労働安全衛生規則第151条の25) | 機能を点検する |
| 定期自主検査(年次) | 1年を超えない期間ごとに1回(労働安全衛生規則第151条の21) | 異常の有無を検査する |
| 定期自主検査(月次) | 1月を超えない期間ごとに1回(労働安全衛生規則第151条の22) | 検査項目に含まれない |
後退操作でブザーが鳴るかは、運転席の運転者だけでは聞こえ方を判断しにくい項目です。点検の際に周囲の作業者へ聞こえ方を確かめてもらう手順を決めておくと、点検の抜けを防げます。手順の書き方は、フォークリフトの安全作業手順書の作り方で解説しています。
年1回の特定自主検査でのフォークリフトの警報装置の扱い
フォークリフトのバックブザーが年1回の検査義務の中でどう扱われるかを知ると、検査業者に確かめる項目を絞り込めます。2026年1月から適用されている基準の中身もあわせて確認しましょう。
労働安全衛生規則第151条の21第1項第9号は、車体、ヘッドガード、バックレストなどと並べて、警報装置の異常の有無を年次の検査項目に挙げています。労働安全衛生規則第151条の24は、この年次の自主検査をフォークリフトの特定自主検査と定めています(※1)。
2026年1月1日から適用されている特定自主検査基準(厚生労働省告示第321号)は、警報装置を含むスイッチ類を操作し、作動の適否と取付け状態を調べるよう定めています。判定基準は、正常に作動し、かつ、適正に取り付けられていることです(※2)。
年次と月次の自主検査の結果は、労働安全衛生規則第151条の23により記録して3年間保存します。月次の検査項目に警報装置は入っていないため、年次の検査の間は作業開始前点検で作動を確かめ続けることになります。
(※1)出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」
(※2)出典:厚生労働省「特定自主検査基準」(令和7年厚生労働省告示第321号)
公道を走るフォークリフトのバックブザーの義務|道路運送車両の保安基準
公道を走るフォークリフトのバックブザーには、トラックやバスに課された後退時の通報装置の義務がかかりません。道路運送車両の保安基準の改正は、大型特殊自動車と小型特殊自動車を対象から除いているためです。
公道での扱いは、次の3点に分けて解説します。
- 公道を走るフォークリフトの区分(小型特殊と大型特殊)
- 保安基準第43条でのフォークリフトの警音器とバックブザーの扱い
- 車両後退通報装置の義務化とフォークリフトの除外
構内だけで使う機体と公道も走る機体の違いを押さえると、ナンバーを取る機体の装備を過不足なく決められます。
公道を走るフォークリフトの区分(小型特殊と大型特殊)
公道を走るフォークリフトのバックブザーの義務は、機体が小型特殊自動車と大型特殊自動車のどちらに当たるかを先に押さえると整理しやすくなります。区分の基準となる数値を確かめましょう。
大分市は、長さ4.7m、幅1.7m、高さ2.8m以下かつ最高時速15キロメートル以下のフォークリフトを小型特殊自動車として案内しています(※1)。橋本市は、こうした要件を1つでも超えるフォークリフトなどの建設機械は大型特殊自動車になると案内しています(※2)。
どちらの区分でも、公道を走る機体には道路運送車両の保安基準が適用されます。厚生労働省が公開しているフォークリフト運転技能講習の補助テキストも、公道を走る場合は道路運送車両法に定められた保安部品を整備し、該当する自動車運転免許が必要だと説明しています(※3)。
保安基準第43条でのフォークリフトの警音器とバックブザーの扱い
公道を走るフォークリフトのバックブザーは、道路運送車両の保安基準で義務づけられた装置ではなく、備えることが認められた装置として扱われています。警音器との違いを確かめましょう。
道路運送車両の保安基準第43条第1項は、自動車(被牽引自動車を除く。)に警音器を備えるよう定めています。同条第4項は、警音器と紛らわしい音を出す装置を禁じる一方、後退するときに歩行者等に警報するブザは例外として認めています(※4)。
国土交通省が掲載している第43条の資料は2003年7月7日時点の版です。公道を走る機体の装備を決める際は、販売店に現行の基準への適合を確かめてください。
車両後退通報装置の義務化とフォークリフトの除外
トラックで進んだバックブザーの義務化の範囲を確かめると、公道を走るフォークリフトに同じ装備が必要かを判断できます。対象から除かれている車両の種類を押さえましょう。
国土交通省は2023年1月4日に保安基準を改正し、原動機が動いている状態でシフトを後退に入れると自動で音を出す車両後退通報装置を義務づけました。適用は新型車が2025年1月19日、継続生産車が2027年1月19日からです(※5)。
この改正は、大型特殊自動車、小型特殊自動車、車両総重量3.5トン以下の貨物自動車などを対象から除いています(※5)。構内だけで使う機体と公道も走る機体の違いは、次のとおりです。
| 項目 | 構内だけで使う機体 | 公道も走る機体 |
|---|---|---|
| 主に適用される法令 | 労働安全衛生規則とフォークリフト構造規格 | 左記に加え、道路運送車両の保安基準 |
| 警報の装備 | 警報装置を備える(フォークリフト構造規格第6条) | 左記に加え、警音器を備える(道路運送車両の保安基準第43条) |
| 後退時の通報装置 | 装置名を指定した条文は今回確認した範囲にない | 2023年1月公布の改正の対象外 |
公道を走らせるかどうかで適用される基準と必要な装備が変わるため、公道走行の有無は購入時に決めておくと装備の選定で迷いません。登録の手続きは、機体の区分に応じて市区町村や運輸支局に確かめてください。
(※1)出典:大分市「トラクター、フォークリフト等の小型特殊自動車も公道走行の有無に関わらず申告が必要です」
(※2)出典:橋本市「大型特殊自動車・小型特殊自動車について」
(※3)出典:厚生労働省「技能講習補助教材」フォークリフト運転技能講習 補助テキスト(日本語)
(※4)出典:国土交通省「道路運送車両の保安基準 第43条(警音器)」
(※5)出典:国土交通省「道路運送車両の保安基準等の一部を改正する省令及び道路運送車両の保安基準の細目を定める告示等の一部を改正する告示について」
フォークリフトのバックブザーの音量と苦情|義務の範囲で減音と光を組み合わせる
フォークリフトのバックブザーの音量について、今回確認した構造規格と労働安全衛生規則の条文に数値で示した義務はありません。苦情があっても警報装置を外さず、音量の調整や光の警報との組み合わせで対応します。
音への苦情に対応する手段と、それぞれの効果と着手のしやすさは次のとおりです。
| 対策 | 主な効果 | 着手のしやすさ |
|---|---|---|
| 音量を調整できる機種への交換 | 必要な範囲に絞って音を届ける | 販売店への相談から着手できる |
| 光で知らせる装置の追加 | 騒音の大きい場所でも接近を示す | 取付け工事が必要になる |
| 夜間の走行経路と時間帯の見直し | 住宅側へ届く音を減らす | 社内の決定で着手できる |
本項目では、次の3点を解説します。
- バックブザーの音を消す前にフォークリフトの義務を確かめる
- フォークリフトのバックブザーを音量調整型に替える
- 光の警報とフォークリフトのバックブザーを組み合わせる
義務を守ったまま音を抑える手順を知ると、近隣と現場の両方に説明できる対応を選べます。
バックブザーの音を消す前にフォークリフトの義務を確かめる
フォークリフトのバックブザーへの苦情に対応する前に義務の範囲を確かめておくと、取り外しによる法令違反を避けやすくなります。条文と環境基準の両方を見ておきましょう。
ホーンなど他の警報装置がない機体でバックブザーを外すと、フォークリフト構造規格第6条の警報装置を欠いた状態になるおそれがあります。配線を切って鳴らなくする対応も、労働安全衛生規則第151条の25の点検で警報装置の異常として扱われる可能性があります。
環境省の「騒音に係る環境基準」は、主に住居の用に供される地域を含むA及びBの類型で、昼間を55デシベル以下、夜間を45デシベル以下としています(※1)。この基準は生活環境を保全するうえで維持されることが望ましい基準であり、個々の機械の音量を直接規制する値ではありません。
昼間は午前6時から午後10時まで、夜間は午後10時から翌日の午前6時までです(※1)。夜間の基準値は昼間より10デシベル低いため、住宅に近い倉庫では、夜間の作業経路と時間帯を見直す際の参考になります。
フォークリフトのバックブザーを音量調整型に替える
フォークリフトのバックブザーを義務の範囲内で静かにするには、音量を切り替えられる機種への交換が選択肢になります。交換前に確かめる点を整理しましょう。
後付けのバックブザーには、音量を段階的に切り替えられる機種や、周囲の騒音に合わせて音量を変える機種があると言われています。交換を検討する際に確かめておきたい点は、次のとおりです。
- 音量の切替えの段数と、最も小さい音量で作業場の騒音に負けないか
- 夜間だけ音量を下げる場合に、切替えの担当者と時刻を決められるか
- 交換後の作業開始前点検で、周囲の作業者に聞こえ方を確かめられるか
音量を下げすぎると、警報装置としての役割を果たせなくなるおそれがあります。交換後の最初の1週間は、昼と夜の両方で後退時の聞こえ方を作業者に確かめてもらうと、下げすぎに気づきやすくなります。
光の警報とフォークリフトのバックブザーを組み合わせる
フォークリフトのバックブザーに光の警報を組み合わせると、音の義務を満たしたまま、騒音の大きい場所でも接近を伝えやすくなります。公的機関の呼びかけを確かめておきましょう。
岩手労働局の花巻労働基準監督署は、2024年12月のリーフレットで、構内の騒音、照度等の作業環境に合ったパトランプや走行ブザーによる警報装置を設けるよう呼びかけています(※2)。音と光のどちらか一方ではなく、作業環境に合わせて選ぶ考え方です。
音と光の警報の向き不向きは、一般に次のように言われています。
| 警報の種類 | 気づかれやすいとされる場面 | 気づかれにくいとされる場面 |
|---|---|---|
| 音(バックブザー) | 見通しの悪い曲がり角や棚の間 | 騒音の大きい場所や耳栓を着ける作業 |
| 床に光を映す装置(ブルーライト等) | 騒音の大きい屋内 | 日差しの強い屋外 |
| 回転灯(パトランプ) | 離れた場所からの視認 | 作業に集中して周囲を見ていないとき |
騒音の大きい現場では、誘導の合図も音に頼りにくくなります。合図を手信号・笛・無線から選ぶ手順は、フォークリフト誘導の合図の決め方で解説しています。
(※1)出典:環境省「騒音に係る環境基準について」
(※2)出典:岩手労働局 花巻労働基準監督署「フォークリフトを使用する事業場の皆様へ フォークリフトによる労働災害防止を徹底しましょう」
フォークリフトのバックブザーの義務と後進時の事故|接触防止措置との関係
フォークリフトのバックブザーの義務を満たしても、後進時の接触事故を防げるとは限りません。花巻労働基準監督署の集計では災害の約40%がバック走行時に起きており、立入禁止や誘導者の配置と組み合わせる必要があります。
後進の運転そのものが難しい理由は、後輪で向きを変える構造と運転席からの死角にあると言われています。運転のコツは本記事では扱わず、フォークリフトの後進が難しい理由とバック走行のコツで解説しています。
本項目では、次の2点を解説します。
- 労働安全衛生規則第151条の7とフォークリフトのバックブザーの関係
- フォークリフトの災害統計で減っている指標
警報装置と接触防止措置の役割の違いを押さえると、装置に頼りすぎない人と車両の配置を決められます。
労働安全衛生規則第151条の7とフォークリフトのバックブザーの関係
フォークリフトのバックブザーの義務と、接触を防ぐ措置の義務を分けて考えると、装置に頼りすぎない配置を決めやすくなります。条文が求める措置を確かめましょう。
労働安全衛生規則第151条の7は、運転中の車両系荷役運搬機械等又はその荷に接触して危険が生ずるおそれのある箇所への立ち入りを、表示その他の方法により禁止するよう定めています。誘導者を配置して誘導させる場合はこの限りでなく、運転者は誘導に従わなければなりません。
花巻労働基準監督署のリーフレットによると、同署管内で令和元年から令和5年までの5年間に発生したフォークリフトによる休業4日以上の死傷災害は24件で、約40%がバック走行時に発生しています(※1)。警報装置と接触防止措置の役割は、次のように分かれます。
| 措置 | 役割 | 根拠 |
|---|---|---|
| 警報装置(バックブザー等) | 車両の接近を周囲に知らせる | フォークリフト構造規格第6条 |
| 立入禁止の表示 | 危険な箇所への立ち入りを止める | 労働安全衛生規則第151条の7第1項 |
| 誘導者の配置 | 運転者を誘導し、運転者は誘導に従う | 労働安全衛生規則第151条の7第1項ただし書・第2項 |
バックブザーは近づいていることを知らせる装置であり、人が立ち入ることを止める装置ではありません。誘導者を置く場合の立つ場所と動き方は、フォークリフト誘導の立ち位置と動き方で解説しています。
フォークリフトの災害統計で減っている指標
フォークリフトのバックブザーの義務を含む安全対策を見直す際は、悪化している数字だけでなく、減っている指標も確かめておくと対策の手応えを測れます。業界団体がまとめた資料を確認しましょう。
日本産業車両協会が厚生労働省の労働災害統計をもとにまとめた資料によると、2024年のフォークリフトに起因する災害は、死亡災害、死傷災害ともに2年連続で減少し、死亡災害は20件を下回りました(※2)。
資料は減少の理由を示していないため、特定の装置の効果と結びつけることはできません。自社でも、警報装置の交換や立入禁止の表示を見直した時期と、ヒヤリハットの報告件数を並べて記録しておくと、対策の効果を確かめられます。
(※1)出典:岩手労働局 花巻労働基準監督署「フォークリフトを使用する事業場の皆様へ フォークリフトによる労働災害防止を徹底しましょう」
(※2)出典:一般社団法人日本産業車両協会「フォークリフトに起因する労働災害の発生状況」(2025年7月4日)
フォークリフトのバックブザーの義務に関するよくある質問
フォークリフトのバックブザーの義務について、バック走行の禁止の有無、フォークリフトの法令上の義務、回転灯、鳴らないときの対応、音量の定め、誘導者との関係、特定自主検査の7問に答えます。
フォークリフトのバック走行は法律で禁止されていますか?
フォークリフトのバック走行を禁じる条文は、バックブザーの義務と同じく、今回確認した労働安全衛生規則の車両系荷役運搬機械等の規定には見当たりません。後進するときも、労働安全衛生規則第151条の7により、接触のおそれがある箇所への立入禁止か誘導者の配置が必要です。荷で前方が見えにくい場合の運転方法は、社内の作業手順で決めておきましょう。
フォークリフトの法令上の義務には何がありますか?
フォークリフトの法令上の義務には、バックブザーを含む警報装置の備付けのほか、運転資格、点検、検査があります。最大荷重1トン以上の機体は技能講習の修了者が運転し、1トン未満の機体は特別教育の修了者も運転できます。点検は作業開始前に行い、自主検査は月1回と年1回行って、自主検査の結果は3年間保存します。
フォークリフトに回転灯をつけることは義務ですか?
フォークリフトの回転灯も、バックブザーと同じく、装置名で設置を義務づけた条文は今回確認した労働安全衛生規則とフォークリフト構造規格には見当たりません。花巻労働基準監督署は、構内の騒音や照度に合ったパトランプや走行ブザーを設けるよう呼びかけています。作業場の騒音と明るさを確かめ、音と光のどちらで知らせるかを決めましょう。
フォークリフトのバックブザーが鳴らない場合、そのまま使ってもよいですか?
フォークリフトのバックブザーが鳴らない状態は、作業開始前点検で確かめる義務がある警報装置の機能に異常がある状態です。労働安全衛生規則第151条の26は、点検で異常を認めたら直ちに補修その他必要な措置を講じるよう定めています。レンタル機の場合は使用を止め、レンタル会社に修理や代替機の手配を依頼しましょう。
フォークリフトのバックブザーの音量に法令上の決まりはありますか?
フォークリフトのバックブザーの音量について、今回確認したフォークリフト構造規格と労働安全衛生規則の条文に、デシベルなどの数値で示した義務は見当たりません。音量は、作業場の騒音と近隣の住宅との距離を踏まえて決めます。公道を走る機体は、道路運送車両の保安基準第43条の警音器の定めもあわせて確かめてください。
フォークリフトにバックブザーを付ければ、誘導者は不要になりますか?
フォークリフトにバックブザーを付けても、立入禁止の表示か誘導者の配置という接触防止の義務は残ります。バックブザーは接近を知らせる装置であり、人の立ち入りを止める装置ではないためです。誘導者が担う役割と合図の種類は、フォークリフト誘導者の役割と合図の種類で解説しています。
フォークリフトの特定自主検査でバックブザーも見てもらえますか?
フォークリフトのバックブザーを含む警報装置は、年1回の特定自主検査で検査が義務づけられた項目です。2026年1月1日から適用されている特定自主検査基準は、警報装置を含むスイッチ類を操作して、作動の適否と取付け状態を調べるよう定めています。検査の結果は記録し、3年間保存します。
フォークリフトのバックブザーの義務に関するまとめ
フォークリフトのバックブザーは、装置名での設置義務が条文に見当たらない一方、警報装置としての備付けと点検は義務です。公道を走る場合の扱い、音量の調整、立入禁止や誘導者との組み合わせまでを一体で決めます。
この記事の要点は、次の5つです。
- 法令が求めるのは警報装置の備付けであり、バックブザーという装置名の指定は確認できない
- 警報装置は作業開始前点検と年1回の特定自主検査の対象で、月次の自主検査の項目には入らない
- 公道を走る機体には警音器が必要だが、2023年1月公布の後退時通報装置の義務は特殊自動車を除く
- 音への苦情には、警報装置を外さず、音量の調整と光の警報の組み合わせで対応する
- 警報装置は接近を知らせる装置であり、立入禁止の表示か誘導者の配置は別に必要になる
次の作業開始前点検で、バックブザーが鳴るか、周囲の作業者に聞こえているかを確かめてみてください。
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