フォークリフトの誘導者の兼務は、相手が運転者か作業指揮者かで結論が変わるため、現場で迷いやすい4つの場面と答えを以下の表にまとめました。
| 現場で迷う場面 | 答え |
|---|---|
| 人が足りない日は、運転者が自分で誘導してもいいのか | 運転者との兼務は成り立ちません。条文が運転者と誘導者を別の者として書き分けています。運転者との兼務ができない理由を見る |
| 作業指揮者が誘導も兼ねているが、このままでいいのか | 立ち位置と合図の出し手が両立するなら成り立ちます。3つの基準で判断します。3つの判断基準を見る |
| 誘導者を兼務させるのに、資格は要るのか | 誘導者そのものの資格の定めはありません。教えたかどうかが分かれ目です。資格の要否との関係を見る |
| 兼務の可否は、現場でその都度決めてよいのか | 作業計画と安全作業手順書へ先に書き込みます。社内で決める手順を見る |
この記事を読むと、フォークリフトの誘導者の兼務について、誰と誰を組み合わせてよいかを自社の作業計画に落とし込めるようになります。判断を決めないまま現場任せにすると、作業当日に配置の組み替えが発生し、荷役の開始が遅れます。
まず、フォークリフトの誘導者の兼務がどの場面で問題になるのかを確認しましょう。
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フォークリフト誘導者の兼務が現場で問題になる場面
フォークリフト誘導者の兼務が問題になるのは、人手が足りない現場で運転者や作業指揮者が誘導まで担おうとする場面です。組み合わせごとに可否が分かれるため、先の整理が欠かせません。
- フォークリフト誘導者の兼務が増える人手不足という背景
- フォークリフト誘導者の兼務でよく挙がる3つの組み合わせ
以下の2項目を読み、自社の現場がどの組み合わせに当てはまるかを確かめましょう。
フォークリフト誘導者の兼務が増える人手不足という背景
フォークリフト誘導者の兼務を人手不足への対処として捉え直すと、配置の見直しに繋げやすくなります。以下のポイントを押さえ、数字で現状を説明できる状態を目指しましょう。
厚生労働省が公表した令和6年の労働災害発生状況によると、陸上貨物運送事業の休業4日以上の死傷者数は16,292人で、前年より77人増えました(※1)。一方、全産業の死亡者数は746人と前年より9人減り、過去最少を記録しています(※1)。
- 荷役の現場では、フォークリフトの走行経路と歩行者の通路が重なる時間帯が生じる
- 人員が1人減ると、誘導の役割が運転者や作業指揮者へ回りやすくなる
- 後進や旋回の場面では、運転者から見えない範囲が広がる
死亡者数が過去最少まで下がった事実は、配置と手順の見直しに効果があることを示しています。後進時に見えない範囲が広がる理由は、フォークリフトの後進が難しい理由を整理した記事で扱っています。
フォークリフト誘導者の兼務でよく挙がる3つの組み合わせ
フォークリフト誘導者の兼務は、誰と組み合わせるかで判断が変わるため、先に組み合わせを並べると整理に繋げやすくなります。以下の表を見て、自社で起きている組み合わせを特定しましょう。
| 組み合わせ | 現場で挙がる理由 | 本記事での結論 |
|---|---|---|
| 運転者が誘導者を兼ねる | フォークリフトの台数に対して人員が足りない | 成り立たない |
| 作業指揮者が誘導者を兼ねる | 作業指揮者がすでに荷役の現場に立っている | 条件つきで成り立つ |
| 玉掛け者や荷受け側の担当者が誘導者を兼ねる | 荷を扱う担当者がその場にいる | 立ち位置しだいで成り立つ |
表の3つは、いずれも人員配置の都合から生まれます。判断を分ける要素は、運転者から見える位置に立ち続けられるかどうかです。
探しても答えが出てこない、という状態は珍しくありません。私は中学から高校にかけて、どの仕事が自分に向いているかを知りたくて本屋を何度も回りましたが、知りたい情報はどこにも書かれていませんでした。そのとき、欲しい情報が世の中に無いことに不満を感じたと記憶しています。
フォークリフトの誘導者の兼務も同じ形をしています。労働安全衛生規則に兼務の可否そのものは書かれていないため、探しても答えの形では出てきません。答えは、複数の条文の書き分けから読み取ることになります。
(※1)出典:厚生労働省「令和6年の労働災害発生状況を公表」
フォークリフト誘導者の兼務を判断する前に押さえる役割の全体像
フォークリフト誘導者の兼務を判断する前に、誘導者そのものの役割を押さえます。誘導者は運転者から見えない範囲を補い、あらかじめ定めた合図でフォークリフトを止め、動かす役割を担います。
役割を押さえると、兼務してよい相手とそうでない相手の線引きが見えてきます。誘導者の役割と合図の種類は、フォークリフト誘導者とは何かを解説した記事で扱っています。
フォークリフト誘導者と運転者の兼務ができない理由
フォークリフト誘導者と運転者の兼務はできません。労働安全衛生規則が、運転者は誘導者の誘導に従わなければならないと定め、両者を別の者として書き分けているためです。
- フォークリフト誘導者と運転者の兼務を否定する条文の書き分け
- フォークリフト誘導者と運転者の兼務を試みた場合に生じやすいこと
以下の2項目を読み、社内で説明できる根拠をそろえましょう。
フォークリフト誘導者と運転者の兼務を否定する条文の書き分け
フォークリフト誘導者と運転者の兼務の可否は、条文の主語をたどると判断に繋げやすくなります。以下のポイントを押さえ、根拠を示して説明できる状態を目指しましょう。
労働安全衛生規則には、フォークリフトを含む車両系荷役運搬機械等について、誘導者に関する規定が複数あります(※1)。兼務の可否そのものは条文に書かれていないため、関係する条文を並べ、主語の書き分けから読み取れる内容を整理しました。
- 第151条の6は、路肩や傾斜地などで転倒や転落のおそれがあるとき、誘導者を配置して誘導させることを事業者に求める
- 第151条の7は、接触の危険がある箇所への立入りを禁止したうえで、誘導者を配置して誘導させる場合を例外として扱う
- 第151条の6第2項と第151条の7第2項は、運転者に対し、誘導者が行う誘導に従うことを求める
- 第151条の8は、誘導者を置くときに一定の合図を定め、その合図を誘導者に行わせることを事業者に求める
4つの条文は、誘導する者と誘導に従う者を別の者として書いています。運転者が自分で出した合図に自分で従う形は、この書き分けと合いません。個別の現場について判断が必要な場合は、所轄の労働基準監督署に確認してください。
フォークリフトに関わる安全衛生法令の全体像は、フォークリフトの安全衛生法令の全体像をまとめた記事で扱っています。
フォークリフト誘導者と運転者の兼務を試みた場合に生じやすいこと
フォークリフト誘導者と運転者の兼務を現場の判断で行うと、確認する人がいない時間が生まれます。以下のポイントを押さえ、起こりうる流れを先に把握しておきましょう。
フォークリフトの荷役は、運転者から見えない範囲を誰かが補うことを前提に組み立てられています。労働安全衛生規則は、誘導者を置くときに一定の合図を定めることを事業者に求めています。
この前提が崩れると、後進や旋回の場面で歩行者との接触が起きやすくなるケースがあります。令和6年の死亡災害では、はさまれ・巻き込まれが110人で前年より2人増えました(※2)。
作業計画の段階で、運転者と誘導者を別の者として指名してください。あわせて、当日に欠員が出たときに誰が誘導へ入るかを決めておいてください。
(※1)出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」
(※2)出典:厚生労働省「令和6年の労働災害発生状況を公表」
フォークリフト誘導者と作業指揮者の兼務を判断する3つの基準
フォークリフト誘導者と作業指揮者の兼務は、労働安全衛生規則が禁じているわけではありません。立ち位置、合図の出し手、作業計画の見直しという3点が両立するかで判断します。
- 基準1 フォークリフト誘導者と作業指揮者の兼務で立ち位置が両立するか
- 基準2 フォークリフト誘導者と作業指揮者の兼務で合図の出し手が一人に定まるか
- 基準3 フォークリフト誘導者と作業指揮者の兼務で作業計画の見直しが止まらないか
以下の3項目を読み、自社の荷役作業がどの基準で引っかかるかを確かめましょう。
| 基準 | 確認する内容 | 兼務を避ける目安 |
|---|---|---|
| 立ち位置 | 運転者から見える位置に立ち続けられるか | 荷の受け渡しで運転者の死角へ入る作業がある |
| 合図の出し手 | 合図を出す者が一人に定まるか | フォークリフトが2台以上同時に動く |
| 作業計画の見直し | 荷や経路が変わったとき指揮に戻れるか | 荷姿や積み付けの変更が作業中に発生する |
3つのうち1つでも当てはまる場合は、兼務を外して人員を分ける判断が安全側です。労働安全衛生規則第151条の4は、作業指揮者に作業計画にもとづく指揮を行わせることを事業者に求めています(※1)。
基準1 フォークリフト誘導者と作業指揮者の兼務で立ち位置が両立するか
フォークリフト誘導者と作業指揮者の兼務では、立ち位置を1か所に決められるかが最初の分かれ目になります。以下のポイントを押さえ、当日の配置図で説明できる状態を目指しましょう。
- 誘導は、運転者から見える位置に立ち続けることが前提となる
- 作業指揮は、荷の状態と作業者の動きを見渡せる位置が望ましい
- 2つの位置が一致する現場では、兼務が成り立つ余地がある
立ち位置が一致しない現場では、どちらかの役割が手薄になります。図面に2つの位置を書き込み、重なるかどうかを先に確かめてください。
基準2 フォークリフト誘導者と作業指揮者の兼務で合図の出し手が一人に定まるか
フォークリフト誘導者と作業指揮者の兼務では、合図の出し手が一人に定まるかどうかが判断を左右します。以下のポイントを押さえ、運転者が迷わない状態を目指しましょう。
- 合図は、あらかじめ社内で定めた形に統一する
- 複数の者が同時に合図を出す状態をつくらない
- フォークリフトが2台以上動く場面では、車両ごとに誘導者を分ける
合図の出し手が定まらない現場では、運転者が誰の指示に従うかを判断する時間が生まれます。判断基準を社内ルールへ落とし込む方法は、現場の安全ルールの作り方を解説した記事で扱っています。
基準3 フォークリフト誘導者と作業指揮者の兼務で作業計画の見直しが止まらないか
フォークリフト誘導者と作業指揮者の兼務では、作業計画の見直しが止まらないかを最後に確認します。以下のポイントを押さえ、変更が起きた場面を想定しておきましょう。
- 荷姿や積み付けが変わったとき、作業計画を見直す判断が必要になる
- 誘導中は運転者から目を離せないため、見直しの判断が遅れやすい
- 変更が頻繁に起きる現場では、兼務を外して役割を分ける
陸上貨物運送事業の死亡者数は、令和6年に108人で前年より2人減りました(※2)。減少はしていますが、役割の重なりを見直す余地は残っています。
(※1)出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」
(※2)出典:厚生労働省「令和6年の労働災害発生状況を公表」
フォークリフト誘導者の兼務と資格の要否の関係
フォークリフト誘導者の兼務を検討すると、誘導者に資格が要るのかという論点が必ず出てきます。労働安全衛生規則は、誘導者そのものの資格について直接の定めを置いていません。
資格がないことと、教えないまま任せてよいことは別です。資格の要否と社内で行う教育の考え方は、フォークリフト誘導者の資格の要否を整理した記事で扱っています。
フォークリフト誘導者が兼務するときの立ち位置の考え方
フォークリフト誘導者が兼務するかどうかにかかわらず、立ち位置は運転者から見える場所に固定します。見えない位置へ入ると、送った合図そのものが運転者へ届かず、誘導が成り立たなくなります。
兼務の可否を最後に分ける要素も、この立ち位置です。具体的な位置と動き方は、フォークリフト誘導の立ち位置と動き方を解説した記事で扱っています。
フォークリフト誘導者の兼務を社内で決めるときの手順
フォークリフト誘導者の兼務は、現場の判断に委ねず、作業計画と安全作業手順書へ先に書き込みます。決めた内容を掲示物で共有し、当日の配置を記録へ残すところまでが一連の手順です。
- フォークリフト誘導者の兼務の可否を作業計画に書き込む
- フォークリフト誘導者の兼務のルールを安全作業手順書と掲示物へ落とす
- フォークリフト誘導者の兼務を決めた後に記録を残す
以下の3項目を読み、自社でどこまで書面になっているかを確かめましょう。
フォークリフト誘導者の兼務の可否を作業計画に書き込む
フォークリフト誘導者の兼務の可否は、作業計画へ書き込むと現場での判断に繋げやすくなります。以下のポイントを押さえ、当日に迷わない状態を目指しましょう。
- 荷役作業ごとに、運転者、作業指揮者、誘導者の氏名を分けて書く
- 兼務を認める作業と認めない作業を、作業名で区別して書く
- 欠員が出たときに誘導へ入る者を、あらかじめ指名して書く
全産業の休業4日以上の死傷者数は、令和6年に135,718人で4年連続の増加となりました(※1)。作業計画に氏名まで書き込むと、当日の口頭調整が減ります。
フォークリフト誘導者の兼務のルールを安全作業手順書と掲示物へ落とす
フォークリフト誘導者の兼務のルールは、安全作業手順書へ落とすと社内で共有しやすくなります。以下のポイントを押さえ、新しく入った作業者にも伝わる状態を目指しましょう。
| 項目 | 続かない進め方 | 続く進め方 |
|---|---|---|
| 決め方 | 現場ごとに口頭で決める | 作業名ごとに書面で決める |
| 共有 | 朝礼で一度伝える | 手順書と掲示物の両方に残す |
| 見直し | 事故が起きてから見直す | 荷姿や経路が変わった時点で見直す |
書面にすると、誰が判断しても同じ結論になります。安全作業手順書そのものの作り方は、フォークリフトの安全作業手順書の作り方を解説した記事で扱っています。
フォークリフト誘導者の兼務を決めた後に記録を残す
フォークリフト誘導者の兼務を決めた後は、記録を残すと次回の判断に繋げやすくなります。以下のポイントを押さえ、後から振り返れる状態を目指しましょう。
- 兼務を認めた作業と、その日に立った位置を記録する
- 合図の行き違いが起きた場面を、発生した日付とあわせて記録する
- 記録は月ごとに見直し、手順書へ反映する
記事の制作でも同じ形をとっています。人工知能に下書きをさせたとき、もっともらしい文章のなかに実際には無い経歴が混じる危険に気づき、体験を台帳に登録してから参照させる方式へ切り替えました。便利さより、後から検証できることを優先すべきだと考えたためです。
フォークリフトの誘導者の兼務も同じです。検索結果のもっともらしさではなく、労働安全衛生規則と自社の作業計画にもとづいて決め、決めた過程を記録として残してください。
(※1)出典:厚生労働省「令和6年の労働災害発生状況を公表」
フォークリフト誘導者の兼務に関するよくある質問
フォークリフト誘導者の兼務では、運転者との組み合わせ、資格の要否、少人数の現場での扱い、玉掛け作業との重なり、記録の残し方が繰り返し質問されます。以下で6つの質問に答えます。
フォークリフトの誘導者は運転者と兼務できますか?
フォークリフトの誘導者と運転者の兼務はできません。労働安全衛生規則は、運転者に対して誘導者が行う誘導に従うことを求めており、誘導する者と従う者を別の者として書き分けています。人員が足りない場合は、荷役の開始時刻をずらすか、誘導へ入る者をあらかじめ指名しておく形で対応してください。
フォークリフトの誘導者と作業指揮者の兼務に資格は必要ですか?
フォークリフトの誘導者と作業指揮者の兼務そのものに、法令上の資格要件はありません。ただし作業指揮者には、作業計画にもとづいて指揮を行う役割が定められています。兼務させる場合は、指揮の判断が中断しない作業かどうかを先に確認してください。
作業者が2人しかいない現場でもフォークリフト誘導者の兼務は避けるべきですか?
フォークリフトの誘導者の兼務は、2人の現場でも運転者との組み合わせは避けてください。運転者以外の1人が誘導に入る形であれば成り立ちます。どうしても2人目を確保できない場合は、歩行者の立入りを止めたうえで荷役を行う方法を検討してください。
フォークリフトの誘導者が玉掛け作業と兼務しても問題ありませんか?
フォークリフトの誘導者と玉掛け作業の兼務は、立ち位置が両立するかで判断します。玉掛けの作業位置が運転者の死角に入る場合、誘導が途切れる時間が生まれます。荷に近づく作業と誘導が重なる現場では、役割を分けるほうが安全です。
荷主側の立ち会い者がフォークリフト誘導者を兼務してもよいですか?
フォークリフトの誘導者を荷主側の立ち会い者が兼務する形は、合図の取り決めが共有されていれば成り立ちます。合図の意味が事業者間で異なると、運転者が判断に迷います。事前に合図を突き合わせ、当日の担当者名まで決めておいてください。
フォークリフト誘導者の兼務を決めた記録はどこに残せばよいですか?
フォークリフトの誘導者の兼務を決めた記録は、作業計画と安全作業手順書へ残します。あわせて、当日の配置と合図の行き違いが起きた場面を日誌へ書き留めてください。月ごとに見直すと、兼務を続けてよい作業と外すべき作業が分かれてきます。
フォークリフト誘導者の兼務に関するまとめ
フォークリフト誘導者の兼務は、相手が運転者なら成り立たず、作業指揮者なら3つの基準しだいで成り立ちます。判断は現場任せにせず、書面へ落とすところまでを一続きで進めます。
- 運転者との兼務は成り立たない。労働安全衛生規則が両者を別の者として書き分けている
- 作業指揮者との兼務は、立ち位置、合図の出し手、作業計画の見直しの3点で判断する
- 玉掛け者や荷主側の立ち会い者との兼務は、立ち位置と合図の共有しだいで成り立つ
- 決めた内容は作業計画と安全作業手順書へ書き込み、当日の配置を記録に残す
フォークリフトの誘導者の兼務を決める作業は、一度書面にすれば次回から使い回せます。まずは、いま動いている荷役作業の作業計画を開くところから始めましょう。
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『死角での衝突事故を仕組みでゼロにする!「フォークリフト誘導者の基本配置&合図声掛けマニュアル(PDF版)」』
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