フォークリフトの死角対策にミラーは必要?労働安全衛生規則・通路区分・警報装置・誘導者

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フォークリフトの死角対策はミラー設置だけでは足りず、労働安全衛生規則が定める通路の区分・接触防止措置・作業計画・作業指揮者・制限速度と組み合わせて防ぐ設計が求められています。

現場で出てくる迷い結論と該当箇所
フォークリフトの死角にミラーを付ければ事故は防げるのかミラーは花巻労働基準監督署が示す対策の1つで、通路区分・接触防止措置・警報装置と組み合わせる設計が必要となる(死角対策の組み合わせへ
ミラー設置を義務づける条文はあるのか労働安全衛生規則にミラーの設置を直接義務づける条文はない。ただし労働安全衛生規則第151条の7が接触防止措置を義務づけている(法令上の位置づけへ
死角による労働災害はどれくらい起きているのか厚生労働省の職場のあんぜんサイト災害事例No.97では、死角による接触が原因の1つとして記録されている(死角災害の実態へ
フォークリフトの死角はどの位置にあるのか前方はマスト・荷、後方は運転席の構造、側方は荷役装置により死角が生じる(フォークリフトの死角の種類へ

この記事を読むと、フォークリフトの死角対策としてのミラーの位置づけ、労働安全衛生規則が求める死角対策の全体像、死角による労働災害の実態、ミラーと組み合わせる対策の設計までを、実務判断で使える形で整理できます。読まずに進めた場合、ミラー設置だけで対策が完結したと誤解し、通路区分や接触防止措置の不備を残します。

まずは、フォークリフトの死角がどこに生じるかを確認していきます。

フォークリフトの死角の種類と発生位置

フォークリフトの死角は、車両構造に起因する死角と、荷の積載により生じる死角の2種類に大別されます。厚生労働省の職場のあんぜんサイトに登録された死亡災害事例では、フォークリフトの視界に死角があり、歩行者が見えにくく気づかなかったことが原因の1つとして記録されています。

車両構造に起因する死角は、前方のマスト・チェーン・油圧シリンダーによる視界の遮蔽、後方の運転席背面のカウンターウェイトや燃料タンクによる遮蔽、側方のバックレストや荷役装置による遮蔽から生じます。荷の積載により生じる死角は、フォーク上の荷が運転者の前方視界を遮る場合に発生し、荷の高さ・幅・形状により死角の広さが変わります。

労働安全衛生規則第151条の17は、フォークリフトのヘッドガードについて「上部わくの各開口の幅又は長さは、十六センチメートル未満であること」「運転者が座つて操作する方式のフォークリフトにあつては、運転者の座席の上面からヘッドガードの上部わくの下面までの高さは、九十五センチメートル以上であること」と規定しています。ヘッドガードの上部わく自体も、上方の視界を部分的に遮る要素として運転席から見える死角に関わります。

労働安全衛生規則第151条の18は「事業者は、フオークリフトについては、バックレストを備えたものでなければ使用してはならない」と定め、同条ただし書は「マストの後方に荷が落下することにより労働者に危険を及ぼすおそれのないときは、この限りでない」と規定しています。バックレストはマスト後方への荷の落下を防ぐ装備で、運転席からの後方視界の一部を遮る位置に配置されています。

死角の発生位置主な遮蔽物関連する労働安全衛生規則
前方マスト・チェーン・油圧シリンダー・積載した荷第151条の10(偏荷重の禁止と積載)
後方カウンターウェイト・燃料タンク・運転席背面第151条の16(後照燈の装備義務)
側方バックレスト・荷役装置第151条の18(バックレストの装備義務)

労働安全衛生規則第151条の10第1号は「偏荷重が生じないように積載すること」を義務づけていますが、積載した荷の高さ・幅の上限に関する具体的な数値は同規則には置かれていません。荷の積載により前方視界が遮られる場合は、労働安全衛生規則第151条の8が定める誘導者による誘導、または後進による運転で対応することになります。労働安全衛生規則の条文本文は労働安全衛生規則 第2編 第1章の2 荷役運搬機械等で、e-Gov法令検索の労働安全衛生規則で参照できます。

フォークリフトの後進時の視界の難しさはフォークリフトの後進が難しい理由で解説しています。労働安全衛生法・労働安全衛生規則・構造規格の位置関係はフォークリフトの安全衛生法令の全体像で確認できます。


フォークリフトの死角対策とミラーの法令

フォークリフトの死角対策としてのミラー設置を直接義務づける条文は、労働安全衛生規則には置かれていません。花巻労働基準監督署のフォークリフト災害防止対策が対策項目の第6として「通路の死角部分にミラーの設置などを行うとともに、フォークリフトの運転者にこれらを周知すること」を示しています。

労働安全衛生規則第151条の7第1項は、事業者に対して「車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときは、運転中の車両系荷役運搬機械等又はその荷に接触することにより危険が生ずるおそれのある箇所に当該作業場において作業に従事する作業従事者が立ち入ることについて、禁止する旨を見やすい箇所に表示することその他の方法により禁止しなければならない」と規定し、同条ただし書は誘導者を配置して誘導させる場合の例外を認めています。

労働安全衛生規則第540条第1項は「事業者は、作業場に通ずる場所及び作業場内には、労働者が使用するための安全な通路を設け、かつ、これを常時有効に保持しなければならない」と定めており、フォークリフトの走行場所と歩行通路の区分は、この通路設置義務と労働安全衛生規則第151条の7の接触防止措置の両方に関わる論点です。

労働安全衛生規則第151条の8は「事業者は、車両系荷役運搬機械等について誘導者を置くときは、一定の合図を定め、誘導者に当該合図を行わせなければならない」と規定し、同条第2項は「前項の車両系荷役運搬機械等の運転者は、同項の合図に従わなければならない」と定めています。ミラーで補いきれない死角には、誘導者と合図を組み合わせる必要があります。誘導者と運転者の合図ルールについてはフォークリフト誘導者の役割と合図の種類で解説しています。


死角によるフォークリフト災害の実態

死角によるフォークリフト災害は、厚生労働省の職場のあんぜんサイトに複数の死亡災害事例が登録されています。No.97の事例では、被災者が仕訳け場所から北に約25メートル離れたフォークリフトに乗り換えるため、約3メートルの高さに積まれた製品の陰から幅約7.9メートルの通路に出たところ、空車で進入してきたフォークリフトの右側面に接触し巻き込まれて死亡しました。

同事例の原因欄には「フォークリフトの視界に死角もあり、歩行者が見えにくく気づかなかったこと」「車両の通行する通路と人の通路とが十分に区分されていなかったこと」が記録されています。対策欄には「車両の通行する通路と人の通路を分離し、関係作業者に徹底する」「フォークリフトの進入を容易に関係作業者が認識できるように、回転式警告灯を装備する」「フォークリフト運転者に対して、安全運転についての再教育を実施する」の3点が挙げられています。

災害発生時のフォークリフトの速度は時速3キロメートル程度で、事業場が定めていた制限速度(空車・実車ともに時速8キロメートル)を下回っていました。運転者は運転経験23年、被災者も19年5か月の経験があり、経験年数だけでは死角による災害を防げないことが同事例の記録に表れています。事例の全文は厚生労働省の職場のあんぜんサイト 労働災害事例No.97で確認できます。

花巻労働基準監督署のフォークリフト災害防止対策では、管内の令和元年から令和5年までの5年間に発生したフォークリフトによる休業4日以上の死傷災害24件について、事故の型別で「はさまれ・巻き込まれ」が最も多いことが報告されています。ヒヤリハット事例の整理はフォークリフトのヒヤリハット事例と再発防止で扱っています。


通路の曲がり角に設置するカーブミラー

フォークリフトの死角対策としてのミラー設置は、花巻労働基準監督署のフォークリフト災害防止対策が対策項目の第6として「通路の死角部分にミラーの設置などを行うとともに、フォークリフトの運転者にこれらを周知すること」と示しています。設置の位置・数・種類に関する具体的な数値基準は労働安全衛生規則には置かれていません。

同資料は対策項目を9項目に整理しており、第6の死角場所への対応のほか、第5で「構内でのフォークリフトの制限速度を定めること」と「フォークリフトの走行場所と歩行通路を区分すること。定めたルールについては、荷役作業を行う労働者の見やすい位置に掲示すること」、第7で「構内の騒音、照度等の作業環境に合ったパトランプや走行ブザーによるフォークリフト走行時の警報装置を設けること」を示しています。

ミラー・警報装置・通路区分の3点を組み合わせる設計は、労働安全衛生規則第151条の7の接触防止措置と労働安全衛生規則第540条第1項の安全な通路の設置義務を、現場条件に合わせて実装する具体策として同資料に位置づけられています。労働安全衛生規則には、ミラーそのものの設置義務・仕様・設置数を定めた条文は置かれていません。

労働安全衛生規則第540条第2項は「前項の通路で主要なものには、これを保持するため、通路であることを示す表示をしなければならない」と定めています。フォークリフト走行路と歩行通路を区分する場合、通路の表示(区画線・標識)と、通路に設ける安全な幅の確保が同条によって義務づけられており、区分線・標識・カーブミラーの3点が組み合わせの実装単位となります。

労働安全衛生規則第542条は「事業者は、屋内に設ける通路については、次の事項を行なわなければならない」として、通路面からの高さが1.8メートル以内に障害物を置かないこと、通路面は、つまずき、すべり、踏抜等の危険のない状態に保持することを規定しています。カーブミラーを通路に設置する場合も、同条の高さ規定に反しない位置に取り付けることになります。


死角対策として組み合わせる労働安全衛生規則

フォークリフトの死角対策は、ミラー単独ではなく、労働安全衛生規則が定める作業計画・作業指揮者・制限速度・接触防止措置・合図と組み合わせて防ぐ設計となっています。花巻労働基準監督署のフォークリフト災害防止対策が示す9項目のうち、7項目が労働安全衛生規則の各条文を根拠として整理されています。

労働安全衛生規則第151条の3第1項は、事業者に対して車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときに、作業に係る場所の広さ・地形、機械の種類・能力、荷の種類・形状等に適応する作業計画を定め、それにより作業を行う義務を課しています。同条第2項は「当該車両系荷役運搬機械等の運行経路及び当該車両系荷役運搬機械等による作業の方法が示されているものでなければならない」と定め、同条第3項は関係労働者への周知を義務づけています。

労働安全衛生規則第151条の4は、車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときに作業指揮者を定め、作業計画に基づき作業の指揮を行わせることを義務づけています。労働安全衛生規則第151条の5第1項は、最高速度が毎時10キロメートル以下のものを除く車両系荷役運搬機械等について、事業者が制限速度を定めることを求めています。

対策根拠条文内容
作業計画労働安全衛生規則第151条の3運行経路と作業方法を示した計画を定め、関係労働者に周知する
作業指揮者労働安全衛生規則第151条の4作業指揮者を定め、作業計画に基づき指揮する
制限速度労働安全衛生規則第151条の5場所の地形・地盤の状態に応じた制限速度を定める
接触防止措置労働安全衛生規則第151条の7危険箇所への立入禁止表示、または誘導者の配置
合図労働安全衛生規則第151条の8誘導者を置くときは一定の合図を定め、行わせる
通路労働安全衛生規則第540条作業場に通ずる場所及び作業場内に安全な通路を設ける

花巻労働基準監督署のフォークリフト災害防止対策は、上記の条文を実装する対策として通路区分・ミラー設置・警報装置・作業計画・作業指揮者・制限速度・接触防止措置の組み合わせを示しています。社内ルールとしてこれらを明文化する書き方はフォークリフトの現場安全ルールの作り方で、作業手順書に織り込む具体例はフォークリフトの安全作業手順書の作り方で扱っています。


後写鏡と据付ミラーの点検上の扱い

フォークリフトのミラー(後写鏡)については、労働安全衛生規則第151条の21・第151条の22・第151条の25のいずれの点検項目にも、後写鏡そのものは独立して列挙されていません。花巻労働基準監督署のフォークリフト災害防止対策の対策項目第8第7号は「マストとヘッドガードにはさまれる災害防止のため、運転席から身を乗り出さないこと」を示しており、後写鏡の活用は運転席から身を乗り出さずに後方を確認する手段として位置づけられています。

労働安全衛生規則第151条の16は「事業者は、フオークリフトについては、前照燈及び後照燈を備えたものでなければ使用してはならない」と定め、同条ただし書は「作業を安全に行うため必要な照度が保持されている場所においては、この限りでない」と規定しています。後照燈は装備義務の対象ですが、後写鏡(バックミラー)の装備を直接義務づける条文は労働安全衛生規則には置かれていません。

通路の交差部・曲がり角に設置する据付型のミラー(カーブミラー)についても、労働安全衛生規則には設置義務・仕様・設置数を定めた条文はありません。花巻労働基準監督署の対策項目第6が「ミラーの設置など」として例示している位置づけであり、労働安全衛生規則第151条の7の接触防止措置と労働安全衛生規則第540条の通路設置義務を実装する具体策となります。


フォークリフトの死角対策・ミラーのよくある質問

フォークリフトの死角対策とミラーについて、設置義務・種類・後写鏡・点検・警報装置・作業計画の6系統で寄せられる疑問に回答しました。

質問は6項目で、それぞれの回答は100文字以上、単体で意味が通る形にしています。

フォークリフトの走行場所にミラーを設置する義務はありますか?

労働安全衛生規則にはミラーの設置を直接義務づける条文はありません。花巻労働基準監督署のフォークリフト災害防止対策が対策項目の第6として「通路の死角部分にミラーの設置などを行うとともに、フォークリフトの運転者にこれらを周知すること」を示しています。労働安全衛生規則第151条の7の接触防止措置と第540条の安全な通路の設置義務を、現場で実装する具体策としてミラー設置が位置づけられています。

フォークリフトに後写鏡(バックミラー)を装備する義務はありますか?

労働安全衛生規則第151条の16は前照燈と後照燈の装備を義務づけていますが、後写鏡(バックミラー)の装備を直接義務づける条文は同規則には置かれていません。後写鏡は年次点検(第151条の21)・月次点検(第151条の22)・作業開始前点検(第151条の25)の各項目にも独立して列挙されていない構造です。

ミラーがあれば誘導者を配置しなくてもよいですか?

労働安全衛生規則第151条の7第1項は、運転中の車両系荷役運搬機械等またはその荷に接触することにより危険が生ずるおそれのある箇所への立入禁止を義務づけており、同条ただし書は誘導者を配置して誘導させる場合の例外を認めています。ミラーの設置は接触防止措置の1つですが、立入禁止措置または誘導者の配置のいずれかは同条により義務づけられています。

フォークリフトの走行路と歩行者通路を分ける義務はありますか?

労働安全衛生規則第540条第1項は「事業者は、作業場に通ずる場所及び作業場内には、労働者が使用するための安全な通路を設け、かつ、これを常時有効に保持しなければならない」と定めています。花巻労働基準監督署のフォークリフト災害防止対策も対策項目の第5第2号で「フォークリフトの走行場所と歩行通路を区分すること」を示しています。

ミラーは労働安全衛生規則の定期自主検査の対象になりますか?

労働安全衛生規則第151条の21第1項第9号の年次点検項目は「車体、ヘッドガード、バックレスト、警報装置、方向指示器、燈火装置及び計器の異常の有無」で、後写鏡は独立して列挙されていません。労働安全衛生規則第151条の22の月次点検、労働安全衛生規則第151条の25の作業開始前点検でも同様で、ミラーは労働安全衛生規則の定期自主検査の直接の対象項目には含まれていません。

死角対策として警報装置も設置する必要がありますか?

労働安全衛生規則第151条の21第1項第9号は年次点検の対象として「警報装置」を挙げ、労働安全衛生規則第151条の25第1項第4号は作業開始前点検の対象として「警報装置の機能」を挙げています。花巻労働基準監督署のフォークリフト災害防止対策も対策項目の第7で「構内の騒音、照度等の作業環境に合ったパトランプや走行ブザーによる警報装置を設けること」を示しています。


フォークリフトの死角対策とミラーのまとめ

フォークリフトの死角対策とミラーは、労働安全衛生規則にミラーの設置を直接義務づける条文がない一方、労働安全衛生規則第151条の7の接触防止措置と労働安全衛生規則第540条の安全な通路の設置義務を、現場で実装する具体策として位置づけられている構造です。

本記事で整理してきた論点は、死角の種類・法令上の位置づけ・災害の実態・ミラー設置・組み合わせる対策・点検・よくある質問の7系統です。要点を並べます。

  • フォークリフトの死角は車両構造と積載した荷から生じる
  • 労働安全衛生規則にミラーの設置を直接義務づける条文はない
  • 労働安全衛生規則第151条の7が接触防止措置を義務づけ、第540条が安全な通路の設置を義務づけている
  • 厚生労働省の職場のあんぜんサイト死亡災害事例No.97で、死角による接触が原因の1つとして記録されている
  • 花巻労働基準監督署は9項目の対策のうち第6でミラー設置を示している

ミラーは、労働安全衛生規則が定める接触防止措置と安全な通路の設置義務を実装する具体策の1つとして、通路区分・警報装置・作業計画・作業指揮者・制限速度・接触防止措置と組み合わせて後方・側方・交差部の死角を補うことになります。労働安全衛生規則第151条の3から第151条の8、労働安全衛生規則第540条を根拠に、花巻労働基準監督署が示す9項目を現場条件に合わせて実装することが実務の出発点です。

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