フォークリフトの立入禁止措置は、労働安全衛生規則第151条の7が定める「原則」で、誘導者の配置はそのただし書にある「例外」ですが、掲示物に何を書き、区画をどこに引くかは条文に書かれていないため拠点ごとに運用がばらつきやすく、現場で迷いやすい5つの場面と答えを以下の表にまとめました。
| 現場で迷う場面 | 答えと読む場所 |
| 立入禁止にするか誘導者を置くか、拠点ごとに判断が割れている | 立入禁止が原則で、誘導者の配置は例外です。切り替えは作業計画を定める側が決め、誘導者本人には決めさせません。第1章で条文の構造を確認する |
| 掲示物に「立入禁止」とだけ書いて貼っているが、足りているのか分からない | 足りません。範囲・対象・時間・例外・責任者の5項目を書きます。第2章で掲示物と区画の作り方を見る |
| 拠点ごとに掲示物の色も文言も違い、本社のルールと合っていない | 掲示物のデータ・設置基準・記録様式を3点セットで配り、設置後の写真で揃い方を確認します。第3章で配り方の手順を見る |
| ばらつきを全社の標準に直したいが、拠点の反発が心配だ | 先にばらつきを集めて分類し、標準にする項目と拠点に残す項目を分けます。第4章で標準化の進め方を見る |
| 誘導者がいる場所に掲示物を残してよいのか、他社のドライバーにも守らせられるのか | 残して構いません。2025年4月1日施行の改正で、対象は契約関係を問わず全ての作業従事者になりました。よくある質問で確認する |
この記事を読むと、現場で掲示物と区画を作り、他の拠点へ同じ形で配り、全社の標準にまとめるまでを、安全管理担当者が一人で段取りできるようになります。掲示物の文言を決めないまま拠点へ配ると、拠点ごとに「立入禁止」の意味が変わり、監査や事故後の説明で、どの拠点の表示が正しいのかを確認し直す手戻りが起きやすくなります。
まず、フォークリフトの立入禁止措置が原則で、誘導者の配置が例外になる条文の構造から確認しましょう。
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フォークリフトの立入禁止措置とは?労働安全衛生規則第151条の7で原則になる理由
フォークリフトの立入禁止措置とは、運転中のフォークリフトや荷に接触するおそれのある箇所へ作業従事者が立ち入ることを、表示その他の方法で禁止することです。誘導者を配置して誘導させる場合だけが例外になります。
条文は立入禁止を先に書き、誘導者の配置を「ただし書」に置いています。この順番が、拠点で判断が割れたときに戻る基準になります。
誘導者は、運転者から見えない死角を補い、あらかじめ定めた合図で運転者を止められる人です。誘導者の役割と合図の種類は、フォークリフト誘導者とは何かをまとめた記事で扱っています。ここでは、誘導者を置くかどうかを決める前提になる立入禁止措置に絞ります。
この章では、次の3点を順に確認します。
- 立入禁止措置が原則で、誘導者の配置が例外になる条文の構造
- 立入禁止措置と誘導者の配置を切り替える判断を、誰が行うか
- 立入禁止措置と第151条の9「荷の下への立入禁止」の違い
条文の構造が分かると、拠点から「誘導者を置いたから立入禁止は要らない」と言われたときに、根拠を示して答えられます。
フォークリフトの立入禁止措置が原則で、誘導者の配置が例外になる条文の構造
フォークリフトの立入禁止措置を「原則」と「例外」に分けて読むと、拠点ごとの運用を1つの基準で比べやすくなります。以下の対比表を見て、自社の各拠点が原則と例外のどちらで動いているかを言えるようにしましょう。
労働安全衛生規則第151条の7は、運転中の車両系荷役運搬機械等やその荷に接触して危険が生ずるおそれのある箇所に作業従事者が立ち入ることを、「禁止する旨を見やすい箇所に表示することその他の方法により禁止しなければならない」と定めています(※1)。
ただし書は、誘導者を配置してフォークリフトを誘導させるときに限り、この禁止を外しています。第2項で、運転者は誘導者の誘導に従う義務を負います(※1)。
陸上貨物運送事業労働災害防止協会の解説によると、2025年(令和7年)4月1日施行の改正で、立入禁止の対象は自社の労働者から、他社の労働者や個人事業者を含む「作業従事者」に広がりました(※2)。京都労働局のリーフレットも、一人親方や他社の労働者、資材搬入業者などが契約関係を問わず対象になると示しています(※3)。
| 項目 | 立入禁止措置(原則) | 誘導者の配置(例外) |
| 根拠 | 第151条の7第1項本文 | 第151条の7第1項ただし書 |
| 守らせる相手 | 作業従事者の全員(契約関係を問わない) | 運転者(誘導に従う義務) |
| 拠点が用意するもの | 表示、または柵・バリケード等 | 誘導者と一定の合図 |
| 向く場面 | 人と車両を分けられる場所・時間帯 | 人と車両を分けられない場所・時間帯 |
| 運用が崩れる例 | 表示が古いまま残る | 誘導者が持ち場を離れる |
厚生労働省の「令和7年における労働災害発生状況(確定値)」では、2025年(令和7年)の休業4日以上の死傷者のうち、激突されが5,548人、はさまれ・巻き込まれが13,047人でした(全産業)(※4)。第151条の7の見出しは「接触の防止」で、この接触を防ぐための措置が立入禁止です。
原則と例外の順番を逆にして「誘導者がいるから表示は要らない」を出発点にすると、誘導者が離れた時間帯に禁止が消えます。第151条群の全体像は、フォークリフトに関わる安全衛生規則の全体像をまとめた記事で確認できます。
(※1)出典:安全衛生情報センター「労働安全衛生規則 第2編 第1章の2 荷役運搬機械等」 (※2)出典:陸上貨物運送事業労働災害防止協会「事業者が行う退避や立入禁止等の措置について」 (※3)出典:京都労働局「2025年4月から事業者が行う退避や立入禁止等の措置について、保護措置の対象が拡大されます」 (※4)出典:厚生労働省「令和7年における労働災害発生状況(確定値)」
フォークリフトの立入禁止措置と誘導者の配置を切り替える判断を、誰が行うか
フォークリフトの立入禁止措置と誘導者の配置の切り替えを、作業計画を定める側の判断に固定すると、現場の思いつきで禁止が外れる状態を防ぎやすくなります。以下の役割表を見て、自社の拠点で誰が決め、誰が実行しているかを書き出しましょう。
労働安全衛生規則第151条の3は、事業者に対し、作業場所の広さや地形、機械の種類と能力、荷の種類と形状に適応する作業計画を定め、運行経路と作業方法を示して関係労働者に周知することを求めています(※1)。第151条の4は、作業指揮者を定め、作業計画に基づいて指揮させることを求めています(※1)。この2つの条文を軸にすると、判断の担い手は次のように分かれます。
| 役割 | 決めること | 決めないこと |
| 事業者(拠点の責任者・安全管理担当) | 作業計画の中で、どの箇所を立入禁止にし、どの箇所・時間帯に誘導者を置くか | 当日の細かな合図の出し方 |
| 作業指揮者 | 当日、作業計画どおりに区画と誘導者が機能しているかの確認と是正 | 作業計画にない例外の追加 |
| 誘導者 | 合図の実行と、運転者を止める判断 | 立入禁止を外すかどうか |
| 運転者 | 誘導に従うこと、区画内に人がいないことの確認 | 区画の位置の変更 |
誘導者に法令上の資格は求められていませんが、社内教育は必要です。資格の要否はフォークリフト誘導者の資格が必要かどうかを整理した記事、作業指揮者との兼務の可否はフォークリフト誘導者の兼務の判断基準をまとめた記事に任せます。切り替えの判断を誘導者本人に委ねると、人が代わるたびに基準が変わります。
(※1)出典:安全衛生情報センター「労働安全衛生規則 第2編 第1章の2 荷役運搬機械等」
フォークリフトの立入禁止措置と第151条の9「荷の下への立入禁止」の違い
フォークリフトの立入禁止措置を第151条の7と第151条の9で分けて理解すると、掲示物を「場所に貼るもの」と「機械の近くに置くもの」に整理しやすくなります。以下の違いを見て、自社の掲示物がどちらの禁止を表しているかを確かめましょう。
労働安全衛生規則第151条の9は、フォークやアーム等の下、またはフォークやアーム等に支持されている荷の下に作業従事者が立ち入ることを、表示その他の方法で禁止するよう求めています(※1)。修理や点検で、労働者に安全支柱や安全ブロック等を使用させるときだけが例外です(※1)。
| 条文 | 禁止する場所 | 例外 | 掲示物を置く場所 |
| 第151条の7 | 運転中のフォークリフトや荷に接触するおそれのある箇所 | 誘導者を配置して誘導させるとき | 作業場所の出入口と区画の角 |
| 第151条の9 | フォークやアーム等の下、またはフォークやアーム等に支持された荷の下 | 修理・点検で安全支柱や安全ブロック等を使わせるとき | フォークリフト本体や荷役場所の見やすい箇所 |
2つの禁止を1枚の掲示物にまとめると、「荷の下に入るな」は守られても、作業場所の外周が曖昧になります。この記事で扱うのは第151条の7の場所への措置で、第151条の9は機械側の表示として別に用意します。
(※1)出典:安全衛生情報センター「労働安全衛生規則 第2編 第1章の2 荷役運搬機械等」
現場でフォークリフトの立入禁止措置を作って貼る方法|掲示物と区画を自分たちで用意する手順
現場でフォークリフトの立入禁止措置を作るときは、接触のおそれのある範囲を床に示し、掲示物に範囲・対象・時間・例外・責任者の5項目を書き、日々の確認を1行で記録します。特別な設備は要らず、床テープと掲示ケースで始められます。
この章は、拠点の安全管理担当者が自分の現場で掲示物と区画を作るための章です。本社で複数拠点の標準化を担当する読者は、第3章と第4章から読み進めても差し支えありません。
4つの項目に共通するのは、法令が決めていない部分を自分たちで決め、決めた内容を目に見える形で残すことです。
この章では、次の4点を順に進めます。
- 立入禁止措置の範囲をどこに引くか
- 立入禁止措置の掲示物に何を書くか
- 掲示物と区画を現場で作る手順
- 日々の記録を1行で残す方法
掲示物の5項目を先に決めておくと、第3章で他の拠点へ配るときに、文言の差し替えが1か所で済みます。
フォークリフトの立入禁止措置の範囲をどこに引くか|運行経路・後進の振り出し・荷の落下範囲
フォークリフトの立入禁止措置の範囲を作業計画の運行経路から起こすと、現場の感覚に頼らず、書面を根拠に線を引きやすくなります。以下の4つの要素を見て、自社の拠点で範囲に含めているものと抜けているものを確かめましょう。
範囲に入れる要素は次のとおりです。
- 運行経路:作業計画に示した走行ルートの両側。「陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン」が陸運事業者と荷主等に求める、走行場所と歩行通路の区分を、そのまま範囲の境界にする(※1)
- 後進時の振り出し:後輪操舵のフォークリフトは、旋回時に車体後部が外側へ振れる。交差点とトラックバースでは、振り出し分を範囲に含める
- 荷の落下範囲:高い位置に荷を上げる棚の前面と、荷を仮置きする場所の周囲
- 誘導者の立ち位置:範囲の外側に確保し、誘導者自身を範囲に入れない
労働安全衛生総合研究所の2015年のコラムは、2009〜2010年(平成21〜22年)のフォークリフト起因の死傷災害1,004件を分析し、はさまれ・巻き込まれが39.0%、激突されが27.0%、激突が9.4%で、接触類の3つが75.4%を占めたと報告しています(※2)。年次の古い分析ですが、範囲の線をどこに引くかが、災害の大半に関わることが分かります。
範囲を広げすぎると、通路が塞がって作業者が区画をまたぐようになり、線の意味が薄れます。運行経路と振り出しに絞り、荷の仮置き場所は作業のたびに移動式の柵で区切る方法もあります。後進で振り出しが起きる理由はフォークリフトの後進が難しい理由を扱った記事に、誘導者の立ち位置の取り方はフォークリフト誘導者の立ち位置と動き方をまとめた記事に任せます。
(※1)出典:熊本労働局「陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン」 (※2)出典:労働安全衛生総合研究所「フォークリフトにおける接触類労働災害を対象とした安全装置及び安全補助装置の開発」
フォークリフトの立入禁止措置の掲示物に何を書くか|範囲・対象・時間・例外・責任者の5項目
フォークリフトの立入禁止措置の掲示物に5項目を書くと、読んだ人が「自分は入ってよいのか」を掲示物だけで判断できる状態に繋げやすくなります。以下の一覧を見て、いま貼ってある掲示物に足りない項目を数えましょう。
私はAIに記事を書かせるとき、自分の体験を混ぜようとして、AIが「言いそうなこと」を生成すると実際には無い経歴まで書かれる危険があると気づき、体験を台帳にして参照させる方式に切り替えました。便利さより、後から検証できることを優先すべきだと思ったからです。あわせて、手順書を作って覚える形をやめ、使う瞬間に手順が目の前に出る形を採用しました。
人の記憶に頼らず、必要な瞬間に必要な情報を目の前に出す考え方は、掲示物にもそのまま使えると思います。朝礼で聞いた内容を覚えていなくても、区画の前に立ったときに読めば行動が決まる文言にします。
| 項目 | 書く内容 | 書かない例 |
| 範囲 | どこからどこまでか(例:黄線の内側、3番バースの前面) | 「この付近」 |
| 対象 | 誰が入れないか(例:関係する作業従事者以外、来訪ドライバーを含む) | 「関係者以外」だけ |
| 時間・条件 | いつ禁止か(例:フォークリフト作業中、常時) | 記載なし |
| 例外 | 誘導者が配置され、誘導に従う場合に限り入れる旨 | 「許可を得た者」 |
| 責任者 | 作業指揮者または拠点の安全管理担当の役職名と連絡先 | 個人名だけ(異動で古くなる) |
日本標識工業会の解説によると、JIS Z 9101:2018とJIS Z 9103:2018は、安全色の赤に「禁止・停止」の意味を割り当て、禁止標識の基本形を円と斜線としています(※1)。労働安全衛生規則は色と形を指定していないため、JISの赤と円・斜線を採用すると、初めて来た他社のドライバーにも意味が伝わります。
5項目を1枚に収めると文字が小さくなります。範囲・対象・時間を大きく、例外・責任者を小さく書き分けます。文言は第3章で他の拠点へ配るため、拠点名と役職名だけを差し替えられる形にしておきます。
(※1)出典:一般社団法人日本標識工業会「改正JIS Z 9101・JIS Z 9103の概要及び解説」(公益社団法人日本保安用品協会サイト掲載)
フォークリフトの立入禁止措置の掲示物と区画を現場で作る手順|材料・貼る位置・周知
フォークリフトの立入禁止措置を「区画の方法を選ぶ、掲示物を貼る、周知する」の順で作ると、貼った翌日から作業指揮者が運用できる状態に繋げやすくなります。以下の表と手順を見て、自社の拠点で1日で終えられるかを見積もりましょう。
区画の方法は、効果と着手のしやすさで選びます。
| 区画の方法 | 主な効果 | 着手のしやすさ |
| 床テープ(赤または黄) | 範囲が常時見える | すぐ着手できる。安価 |
| 移動式バリケード・チェーン | 作業中だけ閉じられる | 当日から使える。保管場所が要る |
| 固定の柵・扉の施錠 | 物理的に入れない | 工事と予算の判断が要る |
| 掲示物のみ | 文言で禁止を伝える | すぐ着手できるが、単独では境界が曖昧 |
陸上貨物運送事業労働災害防止協会の解説は、立入禁止の方法をバリケードの設置、ロープや柵の設置、出入口の施錠などから現場の実態に即して選べばよく、文字による表示に限らないとしています(※1)。表示と物理的な区画を組み合わせる前提で、手順は次のとおりです。
- 作業計画の運行経路図に、前の項目で決めた範囲を写し取る
- 区画の方法を上の表から選び、床テープなら範囲の外周に貼る
- 掲示物を、区画への出入口と角の、立ち止まった位置から読める高さに貼る
- 作業指揮者と運転者、来訪する運送会社の担当者に、範囲と例外を周知する(第151条の3第3項が求める作業計画の周知に含める)
- 貼り終えた状態を写真に撮り、第3章で配る設置基準の見本にする
歩行者通路の床ラインや一時停止表示など、構内ルール全体の作り方はフォークリフトの構内安全ルールの作り方を扱った記事に任せます。ここでは、立入禁止の区画と掲示物だけを1日で作ることを優先します。
(※1)出典:陸上貨物運送事業労働災害防止協会「事業者が行う退避や立入禁止等の措置について」
フォークリフトの立入禁止措置の日々の記録を1行で残す方法
フォークリフトの立入禁止措置の記録を1日1行に絞ると、担当者が代わっても途切れずに続く状態に繋げやすくなります。以下の書式を見て、自社の点検表に1行を足せるかを確かめましょう。
私は会社勤めをやめた後、仕事のパフォーマンスを保つために生活習慣を大きく見直し、1年以上続けたことがあります。集中力は上がりましたが、朝から気持ちが忙しくなる面もありました。続ける負荷が大きいと、効果があっても気持ちが先に疲れるのだと思います。
記録も同じで、項目が多い点検表は最初の1週間は埋まり、その後に空欄が増えると言われています。1行なら埋める負荷が小さく、空欄が出た日も目立ちます。1行に入れる項目は次のとおりです。
- 日付と区画名
- 表示と区画の状態(良、要修理)
- 誘導者の配置の有無
- 区画内への立入の有無(有なら、誰が、なぜ)
- 確認者の役職
立入が「有」の日は、その場でフォークリフトのヒヤリハット事例と再発防止の記事にある報告の型で1件を起こし、1行の記録に報告番号を添えます。1行の記録は、第4章でばらつきを集めるときの材料にもなります。
他の拠点へ同じフォークリフトの立入禁止措置を配り、表示と意味を揃える手順
他の拠点へフォークリフトの立入禁止措置を広げるときは、掲示物のデータ・設置基準・記録様式を1つのセットにして配り、設置後の写真で表示と意味の揃い方を確認します。文言のデータだけを配ると、貼る位置と例外の扱いが拠点ごとにずれます。
3つの項目に共通するのは、配るのは掲示物そのものより、掲示物の意味だという考え方です。同じ掲示物を貼っても、誰が例外を判断するかが拠点で違えば、意味は揃いません。
この章では、次の3点を順に進めます。
- 配るものを3点セットにする
- 表示と意味を揃える4つの手順
- 拠点ごとに変えてよい部分と、変えてはいけない部分
配るものと手順を決めておくと、第4章で拠点の工夫を集めるときに、比べる土台が揃います。
フォークリフトの立入禁止措置を配るときは掲示物のデータ・設置基準・記録様式の3点セットにする
フォークリフトの立入禁止措置を3点セットで配ると、受け取った拠点が「何をどこに貼り、何を書き残すか」を問い合わせずに進められる状態に繋げやすくなります。以下の表を見て、自社がいま配っているものに欠けている要素を確かめましょう。
| 配るもの | 目的 | 拠点で変えてよいか |
| 掲示物のデータ(印刷用) | 文言と色と形を揃える | 拠点名と責任者の役職名だけ変えてよい |
| 設置基準(写真付きの1枚) | 貼る位置・高さ・区画の方法を揃える | 区画の方法は拠点の設備に合わせて選んでよい |
| 記録様式(1行の書式) | 日々の記録を全社で同じ形にする | 変えない |
厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課の資料では、2019年(令和元年)の陸上貨物運送事業の荷役災害は、荷積み込み事業場で29%、荷取り下ろし事業場で42%が発生し、フォークリフトを起因物とする死傷者は842人(全体の6%)でした(※1)。自社の拠点には他社のドライバーが荷役に来るため、拠点ごとに表示の意味が違うと、外部の人ほど迷います。
データは、編集できないPDFと、拠点名だけ差し替えられる編集用の2種類を配ります。編集できる形だけを配ると、善意で文言が変わります。設置基準の1枚には、第2章で撮った写真をそのまま載せます。
(※1)出典:厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課「陸上貨物運送事業における労働災害発生状況」(陸上貨物運送事業労働災害防止協会サイト掲載)
フォークリフトの立入禁止措置の表示と意味を揃える4つの手順|配布から差分の確認まで
フォークリフトの立入禁止措置を「配布、設置、写真で報告、差分の確認」の4手順で広げると、揃っていない拠点を本社が机上で見つけられる状態に繋げやすくなります。以下の手順を見て、どの拠点から始めるかを決めましょう。
- 配布:3点セットと、掲示物の5項目の意味を説明する1枚を、拠点の安全管理担当者に送る
- 設置:拠点が設置基準どおりに貼り、誘導者を置く箇所と時間帯を作業計画に書き足す
- 写真で報告:出入口と角の掲示物、区画の全体、作業計画の該当ページの3枚を本社へ送る
- 差分の確認:本社が見本の写真と並べ、文言・色・位置・例外の扱いの4点で差分を書き出し、拠点に戻す
誘導者を置く拠点では、合図の型も同時に揃えます。手信号・笛・無線の選び方と社内で統一する手順は、フォークリフトの誘導合図の決め方をまとめた記事に任せます。差分は「なぜ違うか」を先に聞くと、第4章で使える拠点の工夫が見つかります。
フォークリフトの立入禁止措置で拠点ごとに変えてよい部分と、変えてはいけない部分
フォークリフトの立入禁止措置の「変えてよい部分」を先に示すと、拠点が本社の指示を自分の現場に合わせて守れる状態に繋げやすくなります。以下の表を見て、自社の配布物にこの線引きが書かれているかを確かめましょう。
| 区分 | 項目 | 理由 |
| 変えない | 掲示物の色と形、5項目の文言、例外を判断する役割、記録の1行 | 意味を揃えるため |
| 変えてよい | 区画の方法(テープ・バリケード・柵)、範囲の形、掲示物の枚数 | 拠点の設備と動線が違うため |
| 拠点から提案する | 5項目に足したい項目、誘導者を置く時間帯の考え方 | 標準の改訂材料になるため |
変えてよい部分を示さずに配ると、拠点は全部を守ろうとして無理な位置に貼るか、全部を自己流に戻すかのどちらかになりやすいと言われています。線引きを配布物に1行で書いておくだけで、問い合わせの数が変わります。
拠点ごとのフォークリフトの立入禁止措置のばらつきを、全社の標準にまとめる進め方
拠点ごとのフォークリフトの立入禁止措置のばらつきは、各拠点の掲示物の写真と1行の記録を集めて分類し、標準にする項目と拠点に残す項目を分けてから、安全作業マニュアルの共通版に書き込む順で全社の標準にまとめます。
3つの項目に共通するのは、本社の正解を先に決めないことです。拠点で機能している工夫を残さないと、標準は守られません。
この章では、次の3点を順に進めます。
- ばらつきを集めて分類する
- 全社の標準にする項目と、拠点に残す項目を決める
- 標準を改訂する仕組みと、改善している指標
分類から始めると、標準を配ったあとに拠点から「うちの現場では使えない」と戻される回数が減ります。
フォークリフトの立入禁止措置のばらつきを集めて分類する|写真と1行の記録を材料にする
フォークリフトの立入禁止措置のばらつきを、直す前に集めて分類すると、標準にすべき工夫と捨ててよい自己流を見分けやすくなります。以下の分類表を見て、自社の拠点の表示がどこに入るかを仕分けましょう。
私は小学生から中学生の頃、肩が良くなるフォームを自分で見つけたことが2回あります。父に見せると「自分のフォームの方が速い球を投げられる」と言われ、そちらに変えました。2回とも肩は元に戻りました。後から見れば、自分で見つけたものを手放したのだと思います。
他人の正解をそのまま採用すると、自分の成果が壊れることがあります。本社が正解を先に決めて拠点に上書きすると、同じことが拠点で起きると思います。だから、直す前に集めて分類します。
| 分類 | 例 | 扱い |
| 法令に反する | 誘導者がいない時間帯に表示を外している | 直ちに是正する |
| 標準に採る | 来訪ドライバー向けに英語を併記している | 全社の標準に取り込む |
| 拠点に残す | 屋外のため床テープでなく移動式の柵を使っている | 設置基準の選択肢に載せる |
| 廃止する | 責任者に個人名を書き、異動後も残っている | 役職名に置き換える |
分類は本社の担当者1人で行わず、拠点の担当者2〜3人に写真を見せて理由を聞きます。写真だけでは、なぜその位置に貼ったかが分かりません。理由を聞いた記録は、第3章の「拠点から提案する」欄と同じ形で残します。
フォークリフトの立入禁止措置で全社の標準にする項目と、拠点に残す項目を決める
フォークリフトの立入禁止措置の標準を「全社で固定する項目」と「拠点で決める項目」の2階建てにすると、拠点数が増えても改訂が1か所で済む状態に繋げやすくなります。以下の表を見て、自社の安全作業マニュアルのどこに書くかを決めましょう。
| 階 | 項目 | 書く場所 |
| 全社(共通版) | 原則と例外の順番、掲示物の5項目と色、例外を判断する役割、記録の1行 | 安全作業マニュアルの共通版 |
| 拠点(付属文書) | 範囲の図、区画の方法、誘導者を置く箇所と時間帯、責任者の役職名 | 拠点別の付属文書と作業計画 |
共通版と拠点別の付属文書に分けるマニュアルの組み方は、フォークリフト安全作業マニュアルの選び方と活用のコツをまとめた記事で扱っています。共通版には「範囲の図は付属文書に置く」とだけ書き、図そのものは入れません。
共通版に範囲の図まで入れると、拠点のレイアウト変更のたびに共通版を改訂することになり、改訂が止まります。付属文書は拠点が更新し、共通版は本社が年1回だけ更新する分担にします。
フォークリフトの立入禁止措置の標準を改訂する仕組み|改善している指標と見直しの周期
フォークリフトの立入禁止措置の標準に改訂の手順を付けると、法令改正や拠点の提案があるたびに、標準が古いまま残る状態を避けやすくなります。以下の3点を見て、自社の標準に見直しの周期が書いてあるかを確かめましょう。
厚生労働省の「令和7年における労働災害発生状況(確定値)」では、2025年(令和7年)の陸上貨物運送事業の死亡者数は80人で、前年より28人(25.9%)減りました(※1)。休業4日以上の死傷者数も15,632人で、前年より660人(4.1%)減っています(※1)。全産業の死亡者数700人は、過去10年間で最少です(※1)。
減っている指標があるため、自社でも「区画内への立入の有」の件数を月ごとに数え、減り方を標準の効果として扱えます。
- 見直しの周期:年1回に加え、労働安全衛生規則の改正時(2025年4月1日施行の改正のように、対象者や方法が変わるとき)
- 廃止した表示の扱い:捨てずに「廃止」と明記し、復活させる条件を1行添えて残す
- 提案の受け口:拠点からの提案は、第3章の「拠点から提案する」欄の内容だけを受け付ける
改訂のたびに全拠点へ再配布せず、変わった項目だけを差し替え用データとして配ります。記録の1行の書式は変えません。書式を変えると、月ごとの比較が途切れます。
(※1)出典:厚生労働省「令和7年における労働災害発生状況(確定値)」
フォークリフトの立入禁止措置に関するよくある質問
フォークリフトの立入禁止措置に関する質問は、誘導者を置いた場合の表示の扱い、表示の方法、対象になる人の範囲、第151条の9との違い、掲示物の色と形、記録、責任者の書き方の7点に集まります。以下に順に答えます。
フォークリフトの立入禁止措置は、誘導者を置けば不要になりますか?
誘導者を配置して誘導させている間は、フォークリフトの立入禁止措置と表示の義務は、労働安全衛生規則第151条の7のただし書により外れます。ただし、誘導者が持ち場を離れた時間帯や、誘導者がいない作業では原則に戻ります。掲示物は残しておき、例外の欄に「誘導者の誘導に従う場合に限り入れる」と書いておくと、誘導者の有無で掲示物を貼り替える手間がなくなります。
フォークリフトの立入禁止措置の表示は、文字で書かなければなりませんか?
フォークリフトの立入禁止措置の表示は、文字による表示に限られません。陸上貨物運送事業労働災害防止協会の解説では、バリケードの設置、ロープや柵の設置、出入口の施錠などから、現場の実態に合う方法を選べばよいとしています。ただし、来訪する他社のドライバーにも意味を伝えるため、柵やロープと合わせて、範囲と例外を書いた掲示物を出入口に置くことをおすすめします。
他社のトラック運転手や請負の作業者にも、フォークリフトの立入禁止措置は必要ですか?
他社のトラック運転手や請負の作業者にも、フォークリフトの立入禁止措置は必要です。2025年4月1日施行の労働安全衛生規則の改正で、立入禁止の対象は自社の労働者から、他社の労働者、個人事業者、資材搬入業者を含む作業従事者に広がり、契約関係の有無は問われません。自社の拠点に荷役に来るドライバーも対象になるため、掲示物の対象欄に「来訪ドライバーを含む」と書いておきます。
フォークリフトの立入禁止措置と、第151条の9の立入禁止は何が違いますか?
フォークリフトの立入禁止措置を定める第151条の7は、運転中のフォークリフトや荷に接触するおそれのある「場所」への立入りを禁止する条文で、誘導者を配置する場合が例外です。第151条の9は、フォークやアーム等の「下」と、フォークやアーム等に支持された荷の「下」への立入りを禁止する条文で、修理・点検で安全支柱や安全ブロックを使う場合が例外です。前者は作業場所に、後者は機械の近くに表示します。
フォークリフトの立入禁止措置の掲示物に、色や形の決まりはありますか?
フォークリフトの立入禁止措置の掲示物について、労働安全衛生規則は色や形を指定していません。ただし、JIS Z 9101:2018とJIS Z 9103:2018は、安全色の赤に禁止・停止の意味を割り当て、禁止標識の基本形を円と斜線としています。市販の標識も同じ形で作られているため、赤の円と斜線を使うと、初めて来た人にも禁止の意味が伝わります。
フォークリフトの立入禁止措置について、記録は何を残せばよいですか?
フォークリフトの立入禁止措置そのものの記録は、第151条の7の条文には求められていません。ただし、作業計画の周知や事故後の説明のために、日付・区画名・表示の状態・誘導者の配置の有無・区画内への立入の有無・確認者の1行を毎日残すことをおすすめします。1行に絞ると、担当者が代わっても続きます。
フォークリフトの立入禁止措置の掲示物に、責任者として誰の名前を書けばよいですか?
フォークリフトの立入禁止措置の掲示物には、作業指揮者または拠点の安全管理担当の役職名と連絡先を書くことをおすすめします。労働安全衛生規則第151条の4は、作業指揮者を定めて作業計画に基づき指揮させることを求めており、区画と誘導者の運用を当日確認する役割がここにあります。個人名を書くと、異動のたびに掲示物が古くなります。
フォークリフトの立入禁止措置に関するまとめ
フォークリフトの立入禁止措置は、労働安全衛生規則第151条の7が定める原則で、誘導者の配置は例外です。現場で5項目の掲示物と区画を作り、3点セットで拠点へ配り、集めて分類してから全社の標準にまとめる順で進めます。
要点は次のとおりです。
- 立入禁止が原則、誘導者の配置がただし書の例外。切り替えは作業計画を定める側が決め、誘導者本人には決めさせない
- 掲示物には範囲・対象・時間・例外・責任者の5項目を書き、JISの赤と円・斜線を使う
- 他の拠点へは、掲示物のデータ・設置基準・記録様式の3点セットで配り、写真で差分を確認する
- 全社の標準は、ばらつきを集めて分類し、共通版と拠点別の付属文書の2階建てに分けてから決める
- 日々の記録は1行に絞り、月ごとの立入件数を標準の効果として数える
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