法人化を後悔するのはどんな時?再び個人事業主へ戻れるかについても言及

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「法人化を検討しているけど、失敗したら後悔しそうだな」
こんな悩みをお持ちの個人事業主の方に向けて、法人化のメリット・デメリットや後悔しないためのポイントを詳しく解説しています。また、法人化が適しているタイミングや、個人事業主のほうが良いケース、さらに「マイクロ法人」という選択肢も紹介しています。法人化を検討する際には、この記事を参考にし、計画的かつ冷静に判断すると、後悔のない選択をするためのヒントが得られるでしょう。

目次

法人化を後悔する理由とは?

法人化を検討している個人事業主が後悔する理由として、以下のような点が挙げられます。

  • 思ったより節税効果が得られなかった
  • 思ったより法人化にお金がかかった
  • 思ったより維持費が高かった
  • 赤字でも税金の支払い義務がある
  • 思った以上にお金を自由に使えない
  • 思った以上に経営方針の決定に制約が出た
  • 思った以上に事務作業や精神面の負担が大きかった
  • 思った以上に廃業する場合の手間が大きかった

法人化にはメリットも多いですが、事前のシミュレーションが不足すると後悔につながることがあります。

思ったより節税効果が得られなかった

法人化して「節税効果が得られなかった」と後悔するケースは、課税所得が800万円〜900万円前後のラインを下回る場合が多いです。以下のように法人税は累進課税の所得税よりも低い税率ですが、法人化には維持費や法人税以外の税金もかかるため、事前にしっかりとしたシミュレーションが必要です。

法人税と所得税の比較表

所得区分所得税率 (個人)
195万円以下5%
195万円超〜330万円10%
330万円超〜695万円20%
695万円超〜900万円23%
900万円超〜1800万円33%
所得区分法人税率 (法人)
800万円以下までの部分15%(800万円以下)
800万円超部分23.2%

※法人税は資本金1億円以下の企業で年800万円超の所得には15%〜23.2%が適用されます。1億円超なら一律23.20%です。

法人化でかかる税金一覧

税の名称税率・内容
法人税所得の15%(800万円以下) / 23.2%
法人住民税所得に応じた税額 + 均等割7万円
法人事業税所得に応じた税率(都道府県ごと)
消費税売上高が1000万円超で発生

法人化すると、赤字でも均等割などの税金がかかるため、所得が低い場合は個人事業主のままの方が税負担が軽減されることが多いです。

思ったより法人化にお金がかかった

法人化にかかる費用は予想以上に高額になることがあります。株式会社と合同会社の設立費用は以下の通りです。

費用項目株式会社合同会社
登録免許税15万円または資本金の7%※どちらか高いほう6万円または資本金の7%※どちらか高いほう
定款認証手数料3万〜5万円不要
収入印紙代4万円(電子定款なら無料)不要(電子定款)
会社の実印作成費用数千円〜数万円数千円〜数万円

合計費用

  • 株式会社:約20万〜25万円
  • 合同会社:約10万〜15万円

株式会社は定款認証が必要なため、費用が高くなりがちです。一方、合同会社は費用を抑えられますが、社会的信用がやや低かったり、資金調達が難しくなったりする点に注意が必要です。法人設立を検討する場合は、これらの費用を事前に確保し、計画的に進めるようにしましょう。

思ったより維持費が高かった

法人化すると、維持費が予想以上に高くなることがあります。個人事業主であれば社会保険料は国民健康保険税と国民年金保険料だけですが、法人化して従業員を雇った場合だけでなくひとり社長(マイクロ法人)でも、厚生年金保険と健康保険料が発生します。保険料の負担割合は都道府県によって変わりますが、個人事業主時代よりも大幅に負担が増えることが一般的です。

さらに、法人になると事業所の維持費や従業員の給与、福利厚生費なども発生し、固定費が膨らみます。法人化は節税効果が期待できる一方、運営に必要な資金を確保していなければ、維持費の高さに後悔することも少なくありません。事前に具体的なコストをシミュレーションし、計画的に法人化を進めましょう。

赤字でも税金の支払い義務がある

法人化すると、たとえ赤字で利益が出ていなくても、法人は法人住民税の均等割を支払う義務があります。法人住民税の均等割は、事業の規模や利益に関係なく課税されるため、最低でも年間7万円の支払いが必要です(資本金1,000万円以下、従業員50人以下の場合)。

個人事業主であれば、赤字の年は所得税や住民税が免除されるため税負担はありませんが、法人では会社が存在する限り均等割が発生します。この固定費は、経営が不安定な時期や設立直後のキャッシュフローが厳しい場合に大きな負担となるでしょう。

法人化を検討する際は、赤字でも避けられない税金があることを理解し、事前に資金計画をしっかり立てることが重要です。

思った以上にお金を自由に使えない

法人化すると個人の資産と法人の資産が明確に分かれるため、代表者であっても法人のお金を自由に使うことはできません。

例えば、個人事業主の場合、事業の利益はそのまま個人の収入となり、生活費や投資などに柔軟に使えます。しかし法人では、利益はあくまで法人の資産とされ、自由に引き出すことはできません。役員報酬として支給を受ける形になりますが、金額は定款もしくは株主総会の決議で決定し、1年ごとに変更は制限されます。

さらに、社長といえども法人のお金を私的に利用すると横領とみなされる可能性があります。自由度が低下するため、個人事業主時代との違いを理解した上で法人化することが重要です。

思った以上に経営方針の決定に制約が出た

法人化すると、経営方針の決定には役員や出資者の意見が影響することがあり、個人事業主時代のようにすべて自分の思い通りに進めることは難しくなります。

例えば、他社から出資を受けた場合、その出資者が経営に対して意見や制約を求めることがあります。また、役員が複数いる場合は、重要な経営方針を合議制で決定しなければならず、独断で進めることはできません。

「自分の好きなように経営を進めたい」という考えで法人化すると、思わぬ制約に直面し、後悔するケースも少なくありません。法人化を検討する際は、意思決定のプロセスや出資者との関係性をあらかじめ理解し、経営方針に柔軟性が求められることを意識しておくことが大切です。

思った以上に事務作業や精神面の負担が大きかった

法人化すると、経理や決算業務は個人事業主時代とは比べものにならないほどの労力がかかります。法人では会社法や税法に基づき、複雑な帳簿や決算書を作成し、正確に申告しなければなりません。  

個人事業主でも日々の帳簿付けは行いますが、法人では株主総会の議事録作成や税務申告などの業務が加わり、事務作業の負担が増加します。また、誤った処理があれば追徴課税などのリスクも伴います。  

もちろん、税理士に依頼すれば解決しますが、専門家への依頼には費用が発生します。設立直後はキャッシュフローに余裕がないことも多いため、事務負担と費用の両面を理解しておかないと負担も大きくなり後悔することにつながります。

また法人化すると、精神面での負担が思いのほか大きくなることがあります。例えば、法人になることで税務調査が入るのではないかという不安や、取引先から法人としての信用や期待を求められることでプレッシャーを感じることなどです。

こうした不安や焦りは、法人設立後しばらくはつきものですが、経営が安定しないうちは精神的に追い込まれる原因にもなります。法人化する前には経済的な準備だけでなく、精神的な負担も想定し、冷静に対応できる心構えが必要です。

思った以上に廃業する場合の手間が大きかった

法人を廃業する際は、手続きの複雑さや費用の面で個人事業主より大きな負担があります。以下は主な手順と費用の概要です。

手順費用
1. 解散の決議株主総会で解散決議を行う
2. 法務局で解散登記登録免許税:30,000円
3. 清算人の選任登記登録免許税:9,000円
4. 官報公告掲載費用:約30,000〜40,000円
5. 債権・債務の清算必要に応じて債務弁済や資産売却
6. 税務署への届出解散確定申告書・異動届出書を提出
7. 清算結了登記登録免許税:2,000円

廃業手続きは2か月以上の期間を要し、合計で10〜15万円程度の費用が発生します。債権・債務がある場合はさらに時間や手間がかかり、特別清算や破産手続きが必要な場合は50万円以上の追加費用も想定されます。

法人化は設立時だけでなく、廃業時にも大きな負担が伴うため、将来的なリスクも考慮した上で計画的に進めることが重要です。

法人化を後悔しないための対策

法人化を後悔しないためには、事前の準備や適切な対策が重要です。以下のポイントを押さえておきましょう。

  • 事前に計画を入念に立ててから法人化する
  • 創業時に融資を受ける
  • 経営や税制、手続きなど、法人化に必要な知識を身に着けておく
  • 必要な場合は専門家に力を借りる
  • 合同会社も検討する

これらの対策をしっかり行えば、法人化後の負担を軽減し、後悔するリスクを減らすことができます。

事前に計画を入念に立ててから法人化する

法人化を後悔しないためには、事前に計画を入念に立てることが不可欠です。業界の動向を調査し、競合との差別化や市場ニーズの把握を行うことで、事業の見通しが明確になります。

特に、資金計画は重要です。法人化には設立費用や維持費が発生するため、資金繰りが甘いと事業が立ち行かなくなる可能性があります。また、長期的な経営方針や事業拡大のビジョンも計画に組み込むべきです。

これらの計画をおろそかにすると、想定外の費用や手間がかかり、法人化が負担になることもあります。事前に入念なシミュレーションを行い計画的に進めると、法人化後の後悔を回避できるでしょう。

創業時に融資を受ける

法人化直後は、予想以上のコストやキャッシュフローの問題で資金が不足しやすいため、創業融資の活用が重要です。特に、日本政策金融公庫や地方自治体、各金融機関が提供する創業融資は、法人設立時に役立ちます。

創業融資は起業直後でも比較的審査に通りやすく、通常よりも低金利でまとまった資金を借りることが可能です。

経営や税制、手続きなど、法人化に必要な知識を身に着けておく

法人化を成功させるには、経営・税制・手続き面の理解が欠かせません。特に法人化に伴う税制は複雑で、法人税や社会保険料の負担、手続きの多さに戸惑うこともあります。

例えば、法人では「法人税」や「法人住民税」が課され、赤字でも税金が発生するケースもあります。また、法人の設立登記や税務署への各種届出、社会保険の加入手続きなど、多岐にわたる事務作業が必要です。

必要な場合は専門家に力を借りる

法人化では、税制や経理、社会保険などの専門的な知識が必要で、これを素人判断で進めると後々大きな影響を受けるリスクがあります。特に、税務処理や手続きにミスがあると、ペナルティや追加コストが発生する可能性があります。

法人化を進めるには、最低限の知識を身につけることが重要ですが、それだけでは不十分な場合も多いです。事業停滞リスク回避のため、必要に応じて税理士や社会保険労務士、行政書士といった専門家の力を借りることを積極的に検討するとよいでしょう。

合同会社も検討する

法人化を検討する際、設立費用を抑えたいなら「合同会社」も選択肢に入れるべきです。合同会社は株式会社と比べて設立コストが大幅に低く抑えられます。

項目株式会社合同会社
登録免許税15万円6万円
定款認証手数料3〜5万円不要
収入印紙代(紙定款)4万円(電子定款で無料)不要

合同会社は定款認証が不要であるため、株式会社より手続きもシンプルです。さらに、運営コストも比較的抑えられる点が魅力です。ただし、社会的信用度や知名度では株式会社に劣ることもあるため、事業の目的や規模に応じて慎重に検討しましょう。

費用を節約しつつ法人化を進めたい場合、合同会社は非常に有効な選択肢となります。

【法人化を後悔】個人事業主に戻るメリット

法人化後に個人事業主に戻ることで得られるメリットもあります。以下にその主なポイントをまとめます。

  • 消費税の納税免除期間がある
  • 税務処理を簡素化できる
  • 社会保険料の負担が軽減される

法人化には多くの利点がありますが、状況によっては個人事業主の方が運営しやすい場合もあります。それぞれのメリットを理解し、事業の形態を柔軟に見直すことが重要です。

消費税の納税免除期間がある

個人事業主に戻ると、新たに事業を開始したとみなされるため、消費税の納税免除期間が適用されることがあります。法人として課税事業者であった場合でも、個人事業主として再スタートを切った場合には、設立から2年間は原則として消費税の納付義務が免除されます。ただし、免除を受けるには前年の売上高が1,000万円を超えているかなど、一定の条件が適用される場合があります。

消費税の負担が軽減されることで、事業再建や事業規模の見直しが容易になる点は、個人事業主に戻る大きなメリットの一つです。

税務処理を簡素化できる

個人事業主に戻ることで、税務処理が簡素化され、経理の負担が大幅に軽減されます。個人事業主でも毎年の確定申告は必要ですが、法人の場合に求められる決算書類の作成や複雑な税務申告書の提出に比べれば、事務作業ははるかにシンプルです。

法人では、損益計算書や貸借対照表の作成、税務署や地方自治体への複数の申告書類の提出が必要であり、税理士などの専門家に依頼するコストも発生します。一方、個人事業主は簡易な青色申告決算書の作成や各種帳簿の作成などといった程度で済むため、日常的な記帳作業の負担が減り、コストの削減にもつながります。

社会保険料の負担が軽減される

個人事業主に戻ると、法人代表者としての社会保険料負担がなくなり、国民健康保険や国民年金に切り替わるため、保険料が軽減される可能性があります。

法人の場合、厚生年金保険や健康保険への加入が義務付けられています。これらの保険料は事業主が半分を負担するため、負担額が高額になりがちです。一方、個人事業主では、収入に応じて計算される国民健康保険料と定額の国民年金保険料を支払う仕組みとなり、事業規模や所得次第では負担が大幅に軽くなることがあります。

仮に法人化後に大幅に収益が減少した場合、社会保険料が経営を圧迫することがあるため、負担を軽減したい場合には個人事業主へ戻る選択が適切な場合があるかもしれません。

【法人化を後悔】個人事業主に戻るデメリット

個人事業主に戻ることにはメリットだけでなく、いくつかのデメリットも存在します。以下に主なポイントをまとめます。

  • 事業に関する責任が無限になる
  • 許認可の再取得が必要
  • 赤字の繰り越しはできない
  • 取引に影響が出る

法人から個人事業主に戻る際は、これらのデメリットを考慮し、事業形態が自分の状況に合っているか慎重に判断することが大切です。

事業に関する責任が無限になる

個人事業主に戻ると、事業に関する責任が無限となり、法人時代のように責任範囲が限定される「有限責任」ではなくなります。

法人では、会社の資産と個人資産が分離されているため、債務の責任は出資金の範囲内に限定されますが、個人事業主の場合は事業上の負債をすべて個人で負担しなければなりません。もし資金繰りが悪化した場合や訴訟などが発生した場合、事業主の生活にも深刻な影響を及ぼす可能性があります。

許認可の再取得が必要

特定の業種では、法人から個人事業主に変更する際、必要な許認可を再取得しなければならない可能性があります。たとえば、飲食業や建設業など、事業運営に許可や資格が必要な業種では、法人時代に取得した許認可が個人事業主への移行後もそのまま使用できるとは限りません。

許認可の再取得には、書類の準備や手続きのための時間と労力が必要で、さらに申請に伴う実費が発生することもあります。また、許認可の審査基準を再度満たす必要があり、場合によっては審査が通らないリスクも考慮しなければなりません。

赤字の繰越しはできない

法人のままなら、税法に基づいて赤字を最大10年間繰り越して翌年度以降の利益と相殺できますが、個人事業主に戻ると法人時代の赤字を繰り越すことはできません。

さらに、個人事業主として発生した赤字も繰越期間が最長3年に短縮されるため、税務面での柔軟性が大幅に低下します。ゆえに法人時代の赤字を活用して節税を図れなくなるため、事業運営の資金計画に影響が出る可能性があります。

取引に影響が出る

法人から個人事業主に戻ると、取引先からの信頼が低下し、取引条件が不利になる可能性があります。法人化には社会的信用度を高める効果があり、特に大規模な取引や新規取引を進める際に有利です。しかし、個人事業主に戻ると、取引先が規模の縮小や経営の不安定さを懸念する場合があります。

さらに、法人としか取引をしない法人もあるため、取引先との契約を継続できなくなるリスクもあります。

法人化を後悔して個人事業主に戻りたいときの方法

法人化を後悔して個人事業主に戻りたい場合、以下の手順を踏む必要があります。

  • 法人の解散と清算
  • 個人事業の開業届提出など

これらの手順を順に進めることで、個人事業主として再スタートできますが、解散や清算には一定の時間と費用がかかるため、計画的に進めることが重要です。

法人の解散と清算

法人を解散するには、まず解散手続きと清算手続きを進める必要があります。解散手続では、株主総会における特別決議(過半数出席、議決権の3分の2以上の賛成)が必要です。この決議に基づき、法務局で解散登記を行います。さらに、解散時には清算人の選任も必要で、通常は法人代表者が務めることが一般的です。

清算手続では、法人が持つ債権の回収や債務の支払いを行い、最終的に残余財産を株主に分配します。また、官報への公告や清算確定申告も必要で、これらの手続きには時間と費用がかかります。

法人の解散と清算には数か月から1年以上かかる場合もあるため、計画的に進めることが重要です。

個人事業の開業届提出など

法人を解散して個人事業主として再スタートを切るには、開業届を税務署に提出する必要があります。加えて、青色申告承認申請書を提出すると節税効果のある青色申告を利用できます。もし家族を従業員として雇用するなら、青色専従者給与に関する届出書も併せて提出します。

これらの届出が完了したら、法人名義で使用していた銀行口座や契約の名義変更も行う必要があります。名義変更をしないままでは、新しい取引先や既存の取引先との事務処理がスムーズに進まない可能性があります。

こうした手続きは早めに済ませることで、個人事業主としての活動をスムーズに開始できます。開業届は事業開始から1ヶ月以内に提出する必要があるなど、手続きには期限が設けられているため、計画的に進めることが重要です。

法人化しておけば良かったと後悔するケース

法人化しなかったことで後悔するケースもあります。以下にその主なポイントを挙げます。

  • 売り上げが安定して納税額が増えたとき
  • 社会的信用が低く取引先との契約がうまくいかなかったとき
  • 社会的信用が低く資金調達がうまくいかなかったとき

これらの状況は法人化すると改善できる可能性があるため、事業の成長や信用力が必要な場面では、法人化を検討するタイミングを逃さないことが重要です。

売り上げが安定して納税額が増えたとき

売り上げが安定し、収入が増えたにもかかわらず法人化をしていない場合、所得税の負担が大きくなることがあります。個人事業主では所得税が累進課税で最大税率45%に達しますが、法人化すれば法人税は15%(所得800万円以下の場合)または23.2%に抑えられるため、一定以上の所得がある場合は法人化の方が節税効果を得やすくなります。

特に、年間所得が900万円を超えるような事業規模では、個人事業主のままだと法人化した場合よりも納税額が大きくなります。つまり900万円〜1,000万円を超えてくる場合は、法人化を検討するとほぼ確実に税負担を減少できるでしょう。

社会的信用が低く取引先との契約がうまくいかなかったとき

個人事業主のままでいると、社会的信用の低さが理由で取引先との契約がうまくいかないことがあります。法人は社会的に認知されやすく、特に取引額の大きい案件や長期契約では信用の高さが求められることが多いため、法人化していないことで取引を断られる場合もあります。さらに、個人事業主の場合は経営の安定性に対する不安を抱かれやすく、資金力や事業の継続性に疑念を持たれることもあります。

事業規模拡大や新規取引先の開拓を目指す場合、法人化による社会的信用の向上は重要な要素となるため、早めに法人化を検討するとよいでしょう。

社会的信用が低く資金調達がうまくいかなかったとき

個人事業主のままでは社会的信用が低いため、事業の安定性などに懸念をもたれて融資を受けにくくなり、資金調達がうまくいかない場合があります。金融機関からの融資や補助金・助成金を活用したい場合、法人であるほうが審査に通りやすく、利用できる選択肢も広がります。

法人化すれば財務状況を明確に示せるため、金融機関からの信頼を得やすくなります。また、株式会社であれば株式発行による資金調達も可能になるため、事業拡大や新規投資の選択肢が増えます。資金調達の面での課題を感じた場合は、法人化の前向きな検討が重要です。

これで後悔しない!法人化すべきタイミング

法人化を検討する際、適切なタイミングを見極めることが後悔しないためのコツです。以下に法人化を検討すべき具体的なタイミングを挙げます。

  • 個人事業主の所得税が法人税よりも高くなりそうなとき
  • 大口の取引が続きそうなとき
  • 資金調達が必要になったとき
  • 優秀な人材を雇用したいとき

これらの状況が見込まれる場合、法人化すると事業運営の幅が広がり、安定した経営基盤を築けるでしょう。

個人事業主の所得税が法人税よりも高くなりそうなとき

個人事業主の所得が増え、所得税の税率が法人税を上回りそうなときが、法人化を検討するタイミングの一つです。個人事業主の所得税は累進課税で、所得が増えると税率も上がり、最大で45%に達します。一方、法人税は所得800万円以下で15%、800万円を超える部分で23.2%の固定税率が適用されるため、一定の所得額を超えると法人化による節税効果が得られます。

具体的には年間所得が900万円〜1,000万円を超える場合や、今後の事業成長で所得がさらに増える見込みがある場合、法人化を検討すると税負担を軽減し、資金の有効活用が可能になります。

大口の取引が続きそうなとき

法人は個人事業主と比べて社会的信用度が高く、大口取引を行う企業や組織は法人を取引相手として求めることが多いです。つまり法人化すると取引先からの信頼が向上し、より大きな契約や新規取引を獲得する可能性が高まります。

さらに、法人格を持つことで、契約条件の交渉が有利になる場合もあります。特に、事業が成長しつつある段階で法人化を行えば、信用力を背景に事業拡大をスムーズに進められるため、タイミングを逃さないことが重要です。安定した収益を確保するための戦略的判断として、法人化は有効な選択肢と言えます。

資金調達が必要になったとき

法人は社会的信用が高いため、金融機関からの融資が受けやすくなり、利用可能な補助金や助成金の幅も広がります。個人事業主では、事業の安定性が懸念され、希望額の融資を受けにくい場合がありますが、法人化すればこれらの壁を越えやすくなります。

また、株式会社として法人化する場合、株式を発行して資金を調達する手段も選択肢に加わります。事業拡大を計画している場合や、資金繰りを円滑に進めたい場合には、法人化による信用力の向上と資金調達の多様化が事業の強力な支えとなるでしょう。

優秀な人材を雇用したいとき

法人は個人事業主に比べて社会的信用度が高く、安定した雇用環境を提供できると見なされるため、求人時に応募者からの信頼を得やすくなります。また、法人化すると社会保険の整備や福利厚生の充実が可能になり、求職者にとって魅力的な雇用条件を提示できるようになります。

さらに、法人としてのブランドイメージが加わることで、特に専門スキルを持つ優秀な人材を引き付ける力が高まります。事業拡大を目指す際には、適切なタイミングで法人化し、強力な人材基盤を構築することが重要です。法人化は単なる節税だけでなく、人材を獲得して長期的に事業を継続する取り組みの一環としても効果を発揮します。

法人化を後悔する前に|個人事業主の方が良いケースとは?

「法人化に適したタイミングはわかったけど、どうしても踏み切れない」
「実際いいタイミングなのかもしれないけど、本当に法人化しても大丈夫なのか不安」
そんな方がいるかもしれません。実際のところ個人事業主の方が適している場合もあります。

  • 事業拡大の予定がない
  • 自分の好きなように事業展開したい
  • 事務の負担を増やしたくない

これらに該当する場合、個人事業主の方が運営の柔軟性や手間の少なさを活かしやすいため、法人化を迷っている方は確認していきましょう。

事業拡大の予定がない

事業拡大の予定がない場合、個人事業主のままの方が適していることがあります。現状の事業規模で満足しており、今後の成長を必要としていないなら、法人化によるメリットを十分に活用できない可能性が高いためです。

法人化には設立や維持に一定のコストがかかるため、事業規模が変わらない状態ではその負担が経営に影響を与えることがあります。また、法人化による煩雑な手続きや事務作業が増えることが負担となり得ます。

自分の好きなように事業展開したい

事業を自分の好きなように展開したい場合、個人事業主のままでいる方が適している場合があります。個人事業主であれば、経営方針や事業戦略をすべて自分の裁量で決定でき、他の役員や出資者の意見に縛られることがありません。一方、法人化すると、経営に関する重要事項は役員や株主の意見を考慮しなければならず、自由度が制限されることがあります。

特に、小規模で独自のビジネスモデルを追求したい場合や、自分のペースで柔軟に事業を進めたい場合には、法人化が必ずしも有利とは限りません。自分の判断を重視し、自由な事業展開を求める場合には、個人事業主の形態が望ましい選択肢となるでしょう。

事務の負担を増やしたくない

法人化すると、法人税や社会保険に関する手続き、定款の管理、決算や株主総会の準備など、多くの事務作業が追加されます。これらは個人事業主の確定申告や簡易な帳簿作成と比べて格段に煩雑であり、場合によっては税理士や社労士など専門家のサポートが必要になることもあります。

個人事業主であれば、日常的な事務作業の負担は軽減され、本業に集中しやすい環境が保てます。手間を増やしたくない場合は、個人事業主の形態を維持することが賢明でしょう。

法人化で後悔したくない場合「マイクロ法人」も

「個人事業主のままのほうがいい条件に当てはまっているかもしれないけど、やっぱり法人格はほしいな」

このように思っている方には、「マイクロ法人」という選択肢もあります。以下にそのポイントをまとめます。

  • マイクロ法人とは?
  • マイクロ法人のメリット・デメリット
  • マイクロ法人を設立する際の注意点

マイクロ法人は、シンプルな運営とコスト削減を目指す方に適していますが、法人化の目的や事業規模に応じて適切かを判断する必要があります。事前に理解を深め、適した形態を選べるようにしましょう。

マイクロ法人とは?

マイクロ法人とは、従業員を雇わずに代表者1人で運営する会社を指します。

個人事業主と異なり、法人として法人税の適用を受けるため、所得が一定以上の場合は節税効果が期待できます。

また、マイクロ法人では法人化により社会的信用を得やすくなり、大口の取引や新規事業の際にも有利に働きます。ただし、設立手続きや維持費がかかり、事務負担が増える点には注意が必要です。

マイクロ法人のメリット・デメリット

マイクロ法人も法人化と同じく、以下のような長所と短所があります。

【マイクロ法人のメリット】

概要解説
所得税や住民税の節税が可能役員報酬として所得を分散することで、給与所得控除を利用し税負担を軽減できる。
社会的信用を得やすい法人としての取引が可能になり、取引先からの信頼や契約のチャンスが向上する。
条件を満たせば消費税の免税事業者になれる個人事業主と同様、売上1,000万円以下であれば、消費税の課税が免除される場合がある。

【マイクロ法人のデメリット】

概要解説
経理業務や事務手続きが増える決算書や法人税申告書の作成が必要となり、業務負担や外注コストが発生する。
設立費用や維持費用が発生する登記費用や法人住民税など、初期費用およびランニングコストが必要。
赤字でも法人住民税(均等割)が発生する法人が存在する限り、最低7万円の均等割を支払う義務がある。

簡単にまとめると、マイクロ法人は節税や信用向上などのメリットがある一方で、設立や維持にコストがかかり、事務負担も増加します。これらを天秤にかけ、事業規模や運営方針に合致するかを判断することが重要です。

マイクロ法人を設立する際の注意点

マイクロ法人を設立する際は、脱税を疑われないよう注意が必要です。個人事業主から法人化する場合は、事業の連続性があるため問題ありません。しかし、個人事業とは別に新たにマイクロ法人を設立する場合、法人の事業内容が個人事業と明確に異なっていないと、税務署から所得分散による租税回避を疑われる危険性があります。

法人化を検討する際は、個人事業と法人の業務内容を明確に区別し、それぞれ独立した収益基盤を持つよう準備を進めることが重要です。

【まとめ】法人化を後悔しないため事前にシミュレーションしておこう!

法人化は多くのメリットをもたらす一方で、コストや運営の負担が予想以上に大きく、後悔するケースもあります。節税効果や社会的信用の向上が期待できる反面、赤字でも税金が発生し、事務作業が増えるなどのデメリットも存在します。一方で、事業拡大の予定がない場合や、自分の裁量で経営したい場合には、個人事業主の方が適している場合もあります。

法人化を後悔しないためには、法人化のメリット・デメリットを理解し、事業の規模や収益、将来のビジョンに基づいて慎重に判断することが重要です。さらに、シミュレーションを行い、専門家の力を借りながら計画的に進めると、法人化後の経営をスムーズに進められるでしょう。

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