有機農業の歴史|起源・現代の課題・未来への展望

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有機農業の歴史

「有機農業」の歴史を知っていますか?スーパーで並ぶ「有機野菜」を見ると、なんだか体に良さそう、環境に優しそうというイメージが沸きますよね。ただ、その背景にある深い歴史や、現代社会が抱える問題との繋がりまで知る機会は少ないかもしれません。この記事では、有機農業がどのように生まれ、発展してきたのか。その壮大な歴史を徹底的に解説します。単なる年表や出来事の羅列ではなく、それぞれの時代の思想や社会の動き、それに貢献した人々の情熱を紐解いていきます。

有機農業の歴史を知ることで、私たちが口にする食がどこから来て、どのように未来へ向かうのかを理解できます。 環境問題や食の安全、持続可能な社会といった重要なテーマに対する、深い洞察と具体的なアクションのヒントを得られるでしょう。反対にこの歴史を知らないと、有機農業を単なるトレンドや贅沢な選択肢と捉え、真の価値や可能性を見過ごしてしまうかもしれません。食と環境の未来を考える上で、ぜひこの旅にご参加ください。


目次

有機農業とは?歴史を知る意義とその全体像

有機農業の定義と特徴

歴史を知る前にまず有機農業の定義を考えましょう。有機農業とは化学的に合成された肥料や農薬を一切使用しない、自然の生態系を生かした農業生産システムのことです。土壌の健全性を保ち、生物多様性を尊重しながら、持続可能な食料生産を目指します。

有機農業のポイントは以下の通りです。

  • 化学肥料・農薬の不使用: 合成された化学物質に頼らず、自然由来の資材や生物の力を活用します。
  • 土壌の健康維持: 堆肥(※有機物を微生物の力で発酵・分解させて作った土壌改良材)の利用や輪作(※同じ畑で毎年違う種類の作物を順番に育てていく栽培方法)などで、土壌微生物の多様性を育み、土壌本来の肥沃度(※土壌が作物の生育に必要な養分をどれだけ供給できるかの度合い)を高めます。
  • 生物多様性の保全: 生き物が生息しやすい環境を整え、生態系全体のバランスを重視します。
  • 環境負荷の低減: 農薬による水質汚染や温室効果ガスの排出を抑え、地球環境への影響を最小限にします。

この項目を読むと、有機農業の基本的な考え方と、なぜそれが現代において重要視されているのかを理解できます。反対に、ここで解説する内容を把握しておかないと、有機農業が単なる「無農薬」という言葉で片付けられ、その本質を見誤ってしまう可能性があるので、後悔しないよう次の項目から詳細を見ていきましょう。

歴史を学ぶことで得られるメリット

有機農業の歴史を知ると、現代の農業が抱える問題や、食と環境の未来に対する深い洞察が得られます。

私たちが歴史から学べるメリットは以下の通りです。

  • 現代の課題の背景を理解できる: なぜ現代において環境問題や食の安全が叫ばれるようになったのか、その歴史的経緯が分かります。
  • 多角的な視点が得られる: 様々な思想や運動が有機農業の発展にどう影響したかを知ることで、物事を多角的に捉える力が養われます。
  • 持続可能な社会へのヒントが見つかる: 過去の成功や失敗から、未来に向けたより良い選択肢を見出す手がかりが得られます。

本記事の構成と読み進め方

本記事では、有機農業の歴史を、その起源から現代の課題、そして未来への展望まで体系的に解説します。世界と日本における有機農業の歩みを、主要な出来事や思想家、制度の変遷とともに追っていきます。


世界における有機農業の歴史の始まり

1920年代ドイツの自然農法とルドルフ・シュタイナー

有機農業の思想的歴史の源流の一つは、1920年代にドイツで提唱されたバイオダイナミック農法にあります。これは、哲学者で教育者のルドルフ・シュタイナーが提唱した人智学(アントロポゾフィー:科学によって精神性を探求していく研究方法)の思想に基づいています。

バイオダイナミック農法の基本理念

バイオダイナミック農法は、農場全体を一つの生命体として捉え、宇宙のリズムや惑星の運行までも考慮に入れた、独自の思想を持つ農法です。その基本理念は以下の通りです。

理念内容
農場を生命体として捉える農場内の土壌、植物、動物、人間、さらには宇宙のエネルギーまでを包括的に捉え、相互の調和を目指す
生命力の活性化堆肥や特殊な調合剤(プレパラート)を用いることで、土壌や作物の生命力を高め、病害虫への抵抗力を強化する
宇宙の調和月や惑星の運行など、宇宙のリズムを作業計画に取り入れ、作物の成長を促進する

シュタイナー農法の実践例

シュタイナー農法は、具体的な実践を通じてその思想を具現化します。

  • プレパラートの使用: 特殊な植物や鉱物、動物の臓器などを用いて作られる微量な調合剤を、土壌や堆肥に散布し、生命エネルギーを活性化させます。
  • 天体の動きを考慮した農作業: 種まきや収穫のタイミングを、月や惑星の満ち欠けに合わせて決定します。
  • 循環型農業の推進: 農場で生産された有機物を堆肥として還元し、外部からの資材投入を最小限に抑えます。

1940~50年代イギリスのアルブレヒト・ハワード

ルドルフ・シュタイナーが思想的な礎を築いた一方、実践的な土壌学の観点から有機農業の重要性を提唱したのが、イギリスの植物学者アルブレヒト・ハワードです。彼はインドでの農業研究を通じて、土壌の健全性が作物や家畜、ひいては人間の健康に不可欠であることを発見しました。

土壌学的貢献と堆肥利用

ハワードは土壌の肥沃度が、有機物の循環と堆肥の利用で維持されることを強調しました。

  • 「不朽の土壌」の提唱: 健康な土壌こそが病害虫に強い作物を育み、家畜の健康を保つという考え方を提唱しました。
  • 堆肥化技術の確立: 有機物を効率的に堆肥化し、土壌に還元する「インドール式堆肥化法」を確立しました。これは、現代の有機農業における堆肥利用の基礎となっています。

著作『農業の道』の影響

ハワードの代表作である『農業の道』(An Agricultural Testament, 1940年)は、近代農業における化学肥料や農薬の多用が、土壌や作物の生命力を奪い、最終的には人間の健康を損なうと警鐘を鳴らしました。この著作は、後の有機農業運動に大きな影響を与え、多くの実践者や研究者に読み継がれています。

1962年アメリカ:レイチェル・カーソン『沈黙の春』

有機農業が広く社会に認知され、環境運動と結びつく大きな転機となったのが、1962年にアメリカで出版されたレイチェル・カーソンの著書『沈黙の春』です。

農薬問題の顕在化と社会的反響

『沈黙の春』は、DDTなどの合成農薬が環境や生態系、そして人体に与える深刻な悪影響を科学的根拠に基づいて告発しました。

  • DDTの危険性: 農薬が食物連鎖を通じて濃縮され、鳥の卵の殻を薄くしたり、人間の体内に蓄積される危険性を指摘しました。
  • 「沈黙の春」の警告: 農薬によって鳥の声が消え、春が静まり返るという象徴的な描写で、環境破壊の深刻さを訴えました。

環境運動から有機農業への潮流

『沈黙の春』は、世界中で大きな社会的反響を呼び、環境保護運動の盛り上がりと化学物質への批判を巻き起こしました。この動きは、単に農薬の使用をやめるだけでなく、より自然に配慮した農業、すなわち有機農業への関心を高めるきっかけとなりました。


各国の有機農業の歴史年表

主要出来事タイムライン

有機農業の歴史は、それぞれの国や地域の社会情勢、環境問題意識の高まりと深く結びつきながら発展してきました。ここでは、世界と日本における有機農業の主要な出来事をタイムラインで見ていきましょう。

年代世界の出来事日本の出来事
1920年代ドイツ:ルドルフ・シュタイナーがバイオダイナミック農法を提唱
1940–50年代英国:アルブレヒト・ハワードが『農業の道』を出版し、堆肥利用の重要性を強調
1962年アメリカ:レイチェル・カーソンが『沈黙の春』を出版し、農薬問題に警鐘を鳴らす
1971年日本:一楽照雄が「有機農業」という言葉を命名し、概念を提唱
2000年日本:日本有機農業研究会が設立され、有機JAS制度が制定される
2006年日本:有機農業推進法が成立し、有機農業の法的枠組みが整備される

有機農業の制度化と認証フローの歴史:IFOAMから有機JASへ

有機農業の歴史上重要なのが、世界的に広まっていく過程で、その基準や認証の必要性が生まれたこと。これにより、消費者が有機農産物を安心して選べるようになり、生産者も明確な目標を持って取り組めるようになりました。

IFOAM国際基準の確立と意義

IFOAM(International Federation of Organic Agriculture Movements:国際有機農業運動連盟)は、有機農業の国際的な基準を策定し、その普及を推進する重要な役割を担っています。

IFOAM設立の背景

1972年、有機農業に関わる世界各国の団体が集まり、有機農業の理念と実践を統一するための国際的な組織としてIFOAMが設立されました。これは、有機農業が各国で独自に発展する中で、その定義や品質に対する認識を統一し、国際的な貿易を円滑にする必要性が高まったためです。

国際基準の主な要件

IFOAMが策定した国際基準は、有機農業の基本的な原則と具体的な実践要件を定めています。主な要件は以下の通りです。

要件内容
生態系の尊重環境との調和を重視し、土壌、水、生物多様性を保全する
化学物質不使用合成農薬、化学肥料、遺伝子組み換え作物の使用を禁止する
動物福祉家畜を飼育する際は、動物本来の行動がとれる環境を提供する
トレーサビリティ(※流通までの履歴を後から追跡できるシステム)原材料の調達から生産、そして消費または廃棄まで、全ての段階で履歴が追跡できる体制を確立する

日本の有機JAS制度制定の経緯と内容

日本においても、国際的な有機農業の動きと消費者の食の安全への関心の高まりを受け、有機JAS制度が2000年に制定されました。

制度発足の社会的背景

1990年代に入り、消費者の食の安全に対する意識が高まる中、「有機農産物」と表示しながら、実際には有機的な生産が行われていない「偽装表示」の問題が顕在化しました。これを受けて、農林水産省は有機農産物の信頼性を確保するため、法的な認証制度の導入に踏み切りました。

JAS認証の運用フロー

有機JAS認証は、農産物や加工食品が有機JAS規格に適合していることを第三者機関が検査・認証する制度です。

  1. 申請: 有機JAS規格に基づいた生産計画を作成し、登録認証機関に申請します。
  2. 実地検査: 登録認証機関の検査員が農場や加工工場を訪れ、生産方法や管理体制が規格に適合しているか確認します。
  3. 認証: 検査に合格すると、有機JASマークの使用が認められます。

定期検査: 認証後も毎年定期的に検査が行われ、継続して規格を満たしているか確認されます。

この制度によって消費者は「有機JASマーク」の付いた農産物を安心して購入できるようになりました。

有機農業推進法の成立と法的枠組み

有機JAS制度の制定に加え、2006年には有機農業推進法が成立し、日本における有機農業のさらなる推進に向けた法的枠組みが整備されました。

推進法の主要ポイント

有機農業推進法は、有機農業の重要性を国が認識し、その推進を国の責務と定めた法律です。主なポイントは以下の通りです。

基本理念: 有機農業が環境保全や持続可能な社会の実現に貢献することを明記しています。

国の責務: 国が有機農業の普及、技術開発、人材育成などを支援する責務を負うことを定めています。

  • 都道府県の役割: 都道府県も有機農業の推進に関する計画を策定し、実践するよう努めることが求められています。

法施行後の効果と課題

有機農業推進法の施行により、日本の有機農業は普及・拡大に向けた大きな一歩を踏み出しました。一方で、以下のような課題も残されています。

  • 生産者の高齢化と後継者不足: 新規就農者が増えにくい状況があります。
  • 生産コストと収量のバランス: 慣行農業と比較して、生産コストが高くなる傾向があり、収量が安定しないリスクもあります。
  • 消費者の理解不足: 有機農産物の価格が高い理由や、その価値が十分に理解されていないことがあります。

思想・社会運動としての有機農業の歴史

有機農業の歴史は、単なる生産技術としてではなく、特定の思想や社会運動と深く結びついています。それは、近代農業への批判から生まれ、食の安全や環境保護といった現代的な課題へとその活動を広げています。

自然農法 vs バイオダイナミック農法の比較

有機農業の思想的背景には、様々な農法や考え方があります。中でも自然農法バイオダイナミック農法は、それぞれ異なる哲学を持ちながらも、共通の目指すところがあります。

項目自然農法(福岡正信など)バイオダイナミック農法(ルドルフ・シュタイナー)
哲学的基盤「何もしない農業」「不耕起」「無除草」「無施肥(※肥料を使用せず作物を育てること)」「無農薬」など、自然の摂理に任せることを重視「人智学」に基づき、農場を一つの生命体と捉え、宇宙のリズムを取り入れることを重視
実践手法耕さない、草を刈らない、肥料を与えない、農薬を使わないを基本とする堆肥や特殊な調合剤(プレパラート)を使用し、月の満ち欠けなど天体の動きに合わせて作業を行う
目指すもの自然の回復力と生命力を最大限に引き出し、持続可能な食料生産を実現する農場全体の生命力を高め、病害虫に強く、栄養価の高い作物を作る

両農法は、化学物質に頼らず、自然の力を引き出すという点で共通していますが、そのアプローチや哲学には明確な違いがあります。

緑の革命への批判と食の安全運動

20世紀半ばに世界的に推進された「緑の革命」(※人口爆発による食糧危機を克服するため、化学肥料や農薬を使って穀物生産を向上させた農業技術革新)は、食料生産を劇的に増加させました。しかし、一方で深刻な問題も引き起こし、有機農業や食の安全運動が台頭するきっかけとなりました。

緑の革命の成果と問題点

成果問題点
食料増産飢餓の緩和に貢献し、多くの人々に食料を供給できた
農業生産性向上短期間で効率的な生産が可能となり、農業従事者の負担軽減につながった

食の安全運動の歴史的経緯

緑の革命の問題点が顕在化するにつれ、消費者の間で食の安全への関心が高まり、様々な運動が起こりました。

  1. 農薬公害問題の顕在化: 『沈黙の春』を契機に、農薬による環境汚染や健康被害への懸念が強まりました。
  2. 消費者運動の活発化: 安全な食料を求める消費者団体が形成され、有機農産物の共同購入などが広がりました。
  3. 食の安全を求める声の増大: GMO(遺伝子組み換え作物)や食品添加物など、新たな食のリスクに対する懸念が、食の安全運動をさらに加速させました。

これらの運動は、有機農業への関心を高め、その普及を後押しする重要な社会的な力となりました。

環境保全運動とSDGsとの連携

現代において有機農業は、単なる食料生産の手段にとどまらず、環境保全運動の中核を担い、SDGs(持続可能な開発目標)の達成にも大きく貢献する役割が期待されています。

生物多様性保全の取り組み

有機農業は、生物多様性の保全に大きく貢献します。

  • 生態系の健全性維持: 化学農薬を使用しないため、ミツバチやてんとう虫などの益虫、土壌微生物が健全な状態で生息できます。
  • 多様な作物の栽培: 単一作物の大規模栽培ではなく、様々な作物を輪作することで、多様な生物の生息環境を提供します。
  • 在来種の保全: 地域に適した伝統的な品種や在来種を守り育てることで、遺伝的多様性を保全します。

地域循環型社会モデル

有機農業は、地域内での資源循環を促し、持続可能な社会モデルの構築に貢献します。

  • 地域の有機資源活用: 地域内で発生する有機廃棄物(生ごみ、家畜糞尿など)を堆肥として活用し、農地に還元します。
  • 地産地消の推進: 地域で生産された農産物を地域で消費することで、輸送にかかるエネルギーや環境負荷を削減します。
  • 地域経済の活性化: 小規模農家や地域の食品加工業者を支援し、地域経済の活性化に貢献します。

これらの取り組みは、SDGsの目標、特に「飢餓をゼロに」「陸の豊かさも守ろう」「気候変動に具体的な対策を」などと深く連携しており、持続可能な社会の実現に向けた重要な柱となっています。


現代の有機農業が抱える歴史的課題と未来への示唆

有機農業の歴史は、持続可能な社会の実現に向けた重要な役割を担う一方で、現代においていくつかの課題に直面しています。これらの課題を克服し、未来へとつなげるためには、多角的な視点と新たな技術の導入が不可欠です。

無農薬・化学肥料不使用のメリットとデメリット

有機農業の最大の特徴である「無農薬・化学肥料不使用」は、環境や健康に多くのメリットをもたらす一方で、生産面でのデメリットも存在します。

項目メリットデメリット
環境への影響・土壌、水質、生物多様性の保全に貢献・地球温暖化ガスの排出量削減・有機資材の調達や運搬にコストと手間がかかる場合がある
作物と健康・農薬残留の心配がなく、安全性が高い・栄養価が高いとされる研究もある・病害虫や雑草の管理が難しく、収量が不安定になる可能性がある・外観が悪くなることがある
生産コストと収量・長期的に見ると土壌の健全性が向上し、持続的な生産が可能・初期投資や手間がかかり、生産コストが高くなる傾向がある・慣行農業に比べて収量が低いことがある
消費者の受け止め方・健康志向の消費者から高い支持を得ている・安全・安心なイメージが強い・価格が高くなる傾向があり、手が出しにくいと感じる消費者もいる

食料安全保障・気候変動対応としての役割

現代の有機農業は、食料安全保障気候変動対応という喫緊の地球規模課題において、重要な役割を果たすことが期待されています。

地域食糧システムとの連携

有機農業は、地域における食料生産と消費のつながりを強化し、食料安全保障に貢献します。

  • 地産地消の推進: 地域で生産された有機農産物を地域で消費することで、食料自給率の向上に貢献し、外部からの供給途絶リスクを低減します。
  • 多様な作物の生産: 特定の作物に偏らず、多様な作物を少量多品目で生産することで、食料供給の安定性を高めます。
  • コミュニティ支援型農業(CSA): 消費者が生産者と直接つながり、あらかじめ農産物の購入を予約することで、生産者の安定的な経営を支援し、食料供給を確保します。

気候変動適応策としての有機手法

有機農業は、気候変動への適応策としても注目されています。

  • 土壌炭素貯留の増加: 堆肥の投入や不耕起栽培などにより、土壌中の有機物が増加し、炭素を土壌中に固定する能力が高まります。これは、大気中の二酸化炭素を削減する「炭素貯留」に貢献します。
  • 水資源の効率的利用: 健康な土壌は保水力が高く、干ばつに強い作物生育を可能にします。
  • 生物多様性の維持: 生物多様性が豊かな生態系は、気候変動による影響に対し、よりレジリエント(回復力がある)と言われています。

未来展望:天然資材・テクノロジー・地域循環型モデル

有機農業の未来は、新たな天然資材の活用、テクノロジーとの融合、そして地域循環型モデルのさらなる深化にかかっています。

  • オフバイオ炭や微生物資材の活用: バイオ炭(生物を炭化させたもの)は土壌改良効果が高く、炭素貯留にも貢献します。また、微生物資材の活用により、土壌の健康をさらに向上させ、作物の生育を促進できます。
  • オフデジタル技術と農業の融合: AIやIoTなどのデジタル技術を活用することで、土壌の状態や作物の生育状況をより正確に把握し、最適な管理を行うことが可能になります。これにより、生産効率の向上や労働力不足の解消に貢献できるでしょう。
  • オフ地域循環型モデルの深化: 地域内で食料、エネルギー、資源が循環するシステムをさらに発展させることで、外部依存度を低減し、より強靭で持続可能な地域社会を構築できます。

有機農業の歴史をつなぐ|具体的な始め方と実践のコツ

有機農業が歴史をつむぐ中で、さまざまな方法が生まれてきました。大規模な農場だけでなく、家庭菜園やベランダでも有機農業は実践できます。ここでは、有機農業を始めたいと考えている方向けに、具体的なステップと実践のコツを紹介します。

家庭菜園・新規就農者向けステップ

有機農業を始めるための基本的なステップは以下の通りです。

ステップ内容
1. 園地選びと土壌診断日当たり、水はけ、風通しの良い場所を選ぶ。可能であれば、土壌診断を行い、土壌の状態(pH、栄養素など)を把握する
2. 初期導入の準備物堆肥、有機質肥料、種子(できれば有機種子)、基本的な農具(スコップ、クワ、ジョウロなど)を用意する
3. 土壌改良良質な堆肥をたっぷりと施し、土壌を柔らかく、水はけと水もちの良い状態に改善する
4. 種まき・定植無理なく育てられる作物から始め、徐々に種類を増やしていくのがおすすめ
5. 日常管理定期的な水やり、雑草対策、病害虫の観察と対策(手で取り除く、防虫ネット利用など)を行う

堆肥づくり・土壌改良の基本ノウハウ

有機農業の基本は、健全な土壌を育むことです。そのためには、堆肥づくり土壌改良が欠かせません。

堆肥の種類と作り方

堆肥は、有機物を微生物の力で分解・発酵させたものです。主な種類と作り方は以下の通りです。

種類材料例特徴と作り方
植物性堆肥落ち葉、枯草、野菜くず、剪定枝など炭素質が豊富で、土壌の団粒構造を促進する。水分と空気を適度に含ませて積み上げ、定期的に切り返す
動物性堆肥牛糞、鶏糞など窒素やリン酸などの栄養分が豊富。水分量を調整し、十分に発酵させてから使用する
生ごみ堆肥家庭の生ごみキッチンから出る生ごみを有効活用できる。専用の容器やコンポストを使用し、微生物の働きを促進する

土壌改良資材の活用方法

堆肥以外にも、土壌の状態を改善するために様々な資材を活用できます。

  • 米ぬか: 土壌微生物の餌となり、土壌の肥沃化を促進します。
  • 油かす: 窒素やリン酸などの栄養分をゆっくりと供給する有機質肥料として利用できます。
  • 石灰資材: 土壌のpHを調整し、作物の生育に適した環境を整えます。

エコロジー&地域循環型の事例紹介

有機農業は、地域社会や生態系全体との調和を目指します。その具体的な例として、コミュニティ支援型農業(CSA)や地域内資源循環の取り組みがあります。

コミュニティ支援型農業(CSA)事例

CSAは、消費者が事前に農産物の代金を支払い、収穫物を定期的に受け取る仕組みです。

  • 消費者のメリット: 新鮮で安全な有機農産物を安定して入手できます。生産者と直接つながり、農業への理解を深められます。
  • 生産者のメリット: 安定した収入が得られ、経営が安定します。消費者のニーズを直接知ることができ、生産計画に反映できます。

地域内資源循環の成功例

地域内資源循環は、地域で発生する資源を有効活用し、地域経済と環境の持続可能性を高める取り組みです。

  • 食品残渣の堆肥化: 地域内の飲食店や家庭から出る食品残渣(ざんさ:残りかす)を回収し、堆肥として農地に戻すことで、廃棄物削減と土壌改良を両立させます。
  • バイオマス発電: 間伐材や農業残渣などを利用して発電し、地域内でエネルギーを自給自足する試みも行われています。
  • 有機農業と観光の連携: 有機農園を観光資源として活用し、農業体験や収穫体験を通じて、都市住民と農村部をつなげます。

素敵な未来を手に入れるため有機農業の歴史と技術を活かそう!

有機農業の歴史を振り返ると、それは単なる食料生産の技術進化でなく、人類が自然とどう共存していくかを探し続けてきた道のりだと分かります。起源から現代の課題、そして未来への展望まで、その全てに持続可能な社会を築くヒントがつまっています。

記事全体の振り返りとキーポイント

本記事では、有機農業が以下の要素で発展したことを解説しました。

  • 思想的起源: ルドルフ・シュタイナーのバイオダイナミック農法やアルブレヒト・ハワードの土壌学研究。
  • 社会運動の胎動: レイチェル・カーソン『沈黙の春』による農薬問題の顕在化と環境運動の高まり。
  • 制度化の進展: IFOAM国際基準の確立、そして日本の有機JAS制度や有機農業推進法の制定。
  • 現代の課題と未来: 気候変動や食料安全保障といった地球規模の課題への対応と、テクノロジーを活用した未来への展望。

有機農業は、化学肥料や農薬に頼らず、土壌の健全性を保ち、生物多様性を尊重するという基本的な原則を貫きながら、時代とともにその意味合いを深めてきました。

今日からできる具体的アクション

有機農業の壮大な歴史を知った私たちは、その知識を活かして今日から具体的な行動を始められます。

  • 有機農産物を選ぶ: スーパーで「有機JASマーク」のついた農産物を選んで購入することは、有機農業を応援する最も手軽な方法です。
  • 家庭菜園を始める: 小さなスペースでも、堆肥を使った土づくりから始め、自分で野菜を育てることで、有機農業を体験できます。
  • 情報を共有する: 有機農業の重要性やその歴史について、家族や友人と話し、知識を広めることも大切な一歩です。
  • 生産者を応援する: 地元の有機農家を訪れたり、CSA(コミュニティ支援型農業)に参加したりして、生産者を直接サポートするのも良いでしょう。

SDGs・気候変動対策への参加方法

有機農業の実践や支持は、国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の達成、特に気候変動対策に大きく貢献します。

  • 「飢餓をゼロに」: 持続可能な食料生産システムを構築し、飢餓をなくすことに貢献します。
  • 「気候変動に具体的な対策を」: 土壌の炭素貯留能力を高め、温室効果ガスの排出を削減します。
  • 「陸の豊かさも守ろう」: 生物多様性を保全し、健全な生態系を維持します。

私たちは、日々の選択を通じて有機農業の発展を後押しすることで、持続可能な地球の未来を築くことに貢献できます。

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